オウサマペンギン「スウ」の成長
葛西臨海水族園ニュース
「スウ」は、葛西臨海水族園で初めて、人が親代わりになってひなを育てる「人工育雛」で成育したオウサマペンギンです。今回は、スウが成育するようすの一部をご紹介します(人工育雛になった経緯はこちらのページをご覧ください)。
当園では過去2回オウサマペンギンの人工育雛に取り組みましたが、残念ながらいずれも成育させることができませんでした。そこで今回は、豊富な人工育雛の経験を持つアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)から、えさの内容や頻度、日齢ごとの体重の増加率などについてアドバイスをもらいました。それを参考にしつつ、当園では入手できないえさもあったため、手に入る範囲でどうやって再現するかを試行錯誤し、スウのようすを注意深く観察しながらえさを与えていきました。すると、順調に体重が増えていき、孵化の翌日は234.8gだった体重が、6ヵ月後には約72倍の17kgにまで成長しました。これは、親が育てる「自然育雛」のひなと変わらない体重です。



また、人工育雛では、人に慣れ過ぎてしまうことで成育後にペアをつくることができず、繁殖に参加しないなどの弊害が起こることがあります。これを防ぐために、人工育雛であっても人との接触は必要最低限とし、早い時期から成鳥といっしょにいる時間をつくり、その時間を少しずつ長くしていきました。その成果もあり、現在は問題なく成鳥とともに行動しているようすが見られます。


いまではひな特有のふわふわとした茶色い綿羽が抜けたため、群れのなかにいると紛れてしまいますが、若い個体の特徴である、クチバシの下側が黒っぽいところで見分けることができます。
見た目はすっかり立派になりましたが、スウのクチバシの下が成鳥と同じオレンジ色になっていくようすや、この先群れのなかでペアをつくり繁殖に参加できるようになるのかなど、これからの成長にもぜひご注目ください。


〔葛西臨海水族園飼育展示係 内山幸〕