アフリカゾウ「砥夢」への挑戦[その2]
多摩動物公園ニュース
多摩動物公園で飼育するアフリカゾウが「
アフリカゾウ舎にはさまざまな扉や仕切りがあり、室内と運動場間の移動だけでも何通りもの道筋があります。使用できる道筋が多いほど移動の選択肢は増え、移動のたびにランダムなルート設定ができるようになります。それは砥夢にとって考える力をきたえることにつながります。
この春から、使用していなかった新たなルートを通れるよう取組みを進め、以前は一方通行だった選択肢が大幅に増加しました。以下に、これまでの取組みから2つの例を紹介しましょう。
ひとつめは、屋内の寝室からスクイズケージを通過して運動場に出るルートです。スクイズケージは油圧操作で横幅が狭まる仕組みになっており、ゾウを物理的に保定することができます。今回の試みのなかで、砥夢はこのルートに対して特に警戒心が強く、始めは寝室の柵を開けても出ることさえためらっていました。そのため、段階を踏んで少しずつ馴らしてみたり、運動場から室内に戻る逆バージョンで通過できないか試みてみたりしました。
その結果、約1ヵ月後にこのルートを

スクイズゲージを通過して第1運動場にも出られる

中のようすを確認中......
ふたつめは、第1運動場と第2運動場間をつなぐルートです。このルートは過去に試したことがありましたが、そのときは警戒して通ることができませんでした。今回もそう簡単にはいかないと思いましたが、なんと一発で通過できたのです。
これは、このルートを試すまでにさまざまなルートに挑戦させるなどいままでと違う体験を提供し続けたことにより、新しいことに対して自ら行動できるようになったためではないかと考えています。
現在は、午前は第2運動場ですごしてから、このルートを通って第1運動場に移動し、午後はそちらですごすことが多いです。飼育係は砥夢がひとつの運動場にいるあいだにもう片方にえさを設置できるので、1日を通してより広い範囲でえさを探索させることができます。

これまでは一度寝室に戻ってから第1運動場に出ていた

目の前には好物のカシの枝が......
新しい取組みへの挑戦によって砥夢の考える力が活性化され、柵を揺する、牙を壁に擦りつけるといった問題行動は減りつつあり、代わりに運動場内を広く使って進んでえさを探索するようすが見られるようになりました。
今後も砥夢のよりよい生活のため飼育係全員で奮闘いたしますので、どうぞあたたかく見守っていただけるようお願いいたします。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 山本〕