140周年企画ズーネット連載 上野動物園この10年

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上野動物園ニュース

 上野動物園をはじめとする都立動物園・水族園は、それぞれの特徴を生かしながらも、同じ都立の施設として連携した取組を進めています。そのための指針となるのが「都立動物園マスタープラン」です。このプランは、都立動物園がどのような姿を目指し、どのように取り組んでいくのかを定めたもので、私たちは常にこれを念頭に置いて日々の業務を行っています。
 最初の都立動物園マスタープラン(以下、第1次計画)は、2011年度から10年計画でスタートしました。2021年度からは、第2次都立動物園マスタープラン(以下、第2次計画)を策定し、新たな課題に取り組んでいます。

 この記事では、第1次計画を振り返るとともに、次の10年の課題を考えてみたいと思います。

第1次都立動物園マスタープランを振り返って

 2011年度からの第1次計画においては、以下に掲げる1~3の動物園の実現を目指しました。それぞれ一定の成果を上げることができたので、その一部をご紹介します。
 第1次都立動物園マスタープラン


1.飼育繁殖技術を世界に発信し、東京、日本そして世界の野生動物の保全に貢献する動物園
希少動物を飼育下で繁殖させて数を増やす「ズーストック計画」を推進しました。また、アカガシラカラスバトを数世代にわたり繁殖させることに成功するなど、小笠原の野生動物保全に積極的に貢献しました。さらに、種ごとの飼育管理マニュアル類の整備や、国内外の動物園との技術交流、文献収集などにより、高度な飼育技術の継承・発展に取り組みました。


2.動物や自然への感性を育み、人々と野生動物との架け橋となる動物園
生態や生息環境を再現し、野生動物の保全について効果的に伝えられる施設として、新たに「ホッキョクグマとアザラシの海」を作りました。また、「動物たちと接して感性を育む取組」として動物とのふれあい活動を子ども動物園で開催したり、「一歩踏み込み、理解を深める取組」として動物について学べる多種多様なプログラムを動物園の内外で実施したりしてきました。
 さらに、園で配布するパンフレット類にはFSC認証紙を使用し、売店ではレインフォレスト・アライアンス認証製品のコーヒーを提供するなど、環境に配慮した取組を進めました。


3.新たな魅力で観光に寄与し、多くの人が繰り返し訪れ、賑わいを創出する動物園
夏休みには開園時間を3時間延長して夜ならではの動物園の魅力を味わっていただいたり、「Visit Zoo」キャンペーンとして都立4園が一体となって動物園・水族園の魅力をお伝えする様々なイベントを行ったりするなどしました。
 また、来園した皆様に安心して動物園を楽しんでいただけるよう、大規模災害を想定した訓練や備蓄の充実、対応マニュアルの整備なども行いました。

第2次都立動物園マスタープランで目指すこと

 第1次計画の計画期間の終了を控えた2020年11月に第2次計画が公表され、現在、この計画に沿って様々な取組を進めています。

 詳しくはこちらのページをご覧ください。

 動物園・水族館はもともと、「レクリエーション」「環境学習」「種の保存」「調査・研究」の4つの役割をもっています。これからは、それらをさらに強化するとともに、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の達成に寄与することも目指さなければなりません。また、都立動物園を取り巻く様々な状況変化を的確に捉えながら取り組んでいく必要もあります。
 第2次計画では、これらをふまえながら、都立動物園の「目指す姿」を前述の4つの役割に対応させて、①「魅せる」(レクリエーション)、②「伝える」(環境学習)、③「守る」(種の保存)、④「極める」(調査・研究)とし、この「目指す姿」の達成に向けた「取組の方向」を定めました。そして、その実現に向けて「取組の方向」ごとに5つの具体的取組を行うこととしています。

 詳細はここではご紹介しきれませんが、都立動物園がこれからどんな動物園を目指すのかについて、「第2次都立動物園マスタープラン」は様々な取組を具体的に示しています。お時間があれば、ぜひ概要版だけでもご覧ください。
これからの動物園の重要課題
 第2次計画のなかで、筆者が特に重要課題と考えるのが、「アニマルウェルフェア(動物福祉)の推進」です。第1次計画でも同様の考え方は記述されていましたが、近年のアニマルウェルフェア(動物福祉)への高い関心は、動物園の運営にも非常に大きな影響を与えています。上野動物園でも、アニマルウェルフェア(動物福祉)を満たすための取組をさらに進め、その評価を行うための検討が始まりつつあります。できることから少しずつでも進めていくことが重要だと考えています。
 様々なご意見をいただきますが、ぜひ上野動物園の取組を見守っていただければと思います。

〔上野動物園教育普及課長 大橋直哉〕

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