【葛西臨海水族園】 変わった形の卵たち

東京ズーネット

 みなさんは「生きものが産んだ卵」と聞くと、どんな色や形を想像するでしょうか? 白くて丸い卵を想像された方が多いかと思いますが、海の生きものには変わった形の卵を産む生きものがいます。今回は葛西臨海水族園の「東京の海」エリアの少し変わった卵を紹介します。
 

毛糸玉?のような卵塊

 まずご紹介するのは「東京湾 アマモ場」水槽。砂の上に何やら毛糸玉のようなものが……。
 

水槽の中に毛糸玉?

 こちらはアマクサアメフラシの卵塊です。一見卵には見えませんが、このヒモの中に大量の小さな丸い卵が入っています。
 

アマクサアメフラシの成体

 この卵は2週間ほどで孵化します。こちらの卵塊は産んでから数日が経っていたようで、発生が進んでいました。顕微鏡で見てみると、中で幼生が動いているようすを確認することができました。
 

顕微鏡で観察したアマクサアメフラシの卵。動いている1つ1つが幼生

 アメフラシのなかまは、潮の満ち引きで起こる急激な水温や塩分の変化、引き潮によって起こる乾燥などの影響を受けやすい海の浅いところに生息しています。その変化から卵を守るため、ゼラチン質で卵を覆っています。この卵塊は素麺のように見えることから「うみぞうめん」とも呼ばれています。
 

人工物のような卵塊

 続いては2階にある「アマモ場の小さな生き物」水槽。こちらには何やら奇妙なものが……。
 

人工物のようにもみえる

 こちらはツメタガイという貝の卵塊です。砂の中にはたくさんの丸い卵が混じっています。
 

ツメタガイの貝殻

 ツメタガイは砂地でくらしています。卵を産むときは卵が波で流されてしまわないように、砂と卵を粘液で固めます。そうして作られた卵塊はお茶碗のような形をしていることから「スナヂャワン」と呼ばれています。

 こちらも約2週間で孵化し、孵化した後はボロボロになってしまいます。
 

黒い実のような卵

 最後は「東京湾にもいるこんな生物」水槽。アマモに何やら黒い実のようなものが……。
 

アマモにたくさん実のようなものがついている

 こちらはコウイカのなかま、シリヤケイカの卵です。
 

シリヤケイカの成体


 シリヤケイカはカモフラージュのために、卵を包む膜(卵嚢)に墨を注入して黒い卵を産みます。こちらは約1か月で孵化します。運がよければ産み付けるところを見ることができるかもしれません。

 さまざまな変わった卵たち。その形にはそれぞれの戦略が隠されています。これらの卵は孵化してなくなってしまうまでの展示になっています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 山中春佳〕

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