【多摩動物公園】ニワトリの祖先、セキショクヤケイを調査する
賑やかなサル山の隣にある多摩動物公園のキジ・ハト舎(園内マップ⑦)では、みなさんがよく知っているニワトリの祖先であるセキショクヤケイ(赤色野鶏)を展示しています。 世界中にはさまざまな品種のニワトリが存在しますが、じつはそのすべてがこのセキショクヤケイを基礎にして、さまざまな改良を施して作られました。改良の目的は、肉や卵を食用とするため、美しい外見や独特な鳴き声を楽しむため、またニワトリどうしを戦わせて競わせるためなど、時代や地域によってさまざまですが、その種類(品種)は300以上存在するといわれています。 現在、動物園だけでなく、大学や畜産分野の研究機関(畜産試験場など)でも注目されている問題があります。それは、日本国内で飼育している個体だけでなく、本来の生息地である東南アジアでも、純粋なセキショクヤケイと考えられている個体が、本当に純粋かどうか、正確にはわかっていないことです。 原因は、セキショクヤケイとニワトリが比較的容易に交雑し、雑種ができてしまうことにあります。そのため、本来の生息地から動物園に搬入した個体であっても、どこかの世代で現地のニワトリと交雑している可能性があれば、必ずしも純粋なセキショクヤケイとは言えなくなるのです。 しかし現時点では、純粋であるはずのセキショクヤケイどうしのひなであれば、体格や羽色など、従来よりセキショクヤケイとされている外見や、標準的な外見とは明確な違いがあっても、同じくセキショクヤケイと扱うしかありません。 ![]() 現在の飼育個体 ![]() 2年前に飼育していた個体 多摩動物公園のセキショクヤケイ そこで、今回、東京農工大学との共同研究として、多摩動物公園を含めセキショクヤケイを飼育している4つの動物園を対象に、セキショクヤケイ全羽の血液を試料として、各個体の全遺伝情報を解析し、動物園のセキショクヤケイがどの時代にどの地域から導入されたかを解明することとなりました。 現時点では、完全に純粋なセキショクヤケイであるかどうかまではわからないにしても、そのルーツを調査・研究することで、今後セキショクヤケイをどのように展示し、保存してこれからの調査研究の礎になればと考えています。 〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 川鍋〕 (2025年06月06日) |