「東京都に税収が集中している」は本当? 都と地方の税収をめぐる議論を読み解く
はじめに
国は、平成20年度税制改正以降、法人二税の一部を国税化して全国へ再配分するいわゆる「偏在是正措置」を進めてきました。これまで、本来都の税収となる財源が令和8年度だけで約1.6兆円、平成20年度以降の累計では約12.6兆円国税化され、他道府県に配分されています。そうした中、令和8年度与党税制改正大綱では、更なる地方法人課税等の見直しを進める方針が示されました。
東京都は、地方分権に逆行し、東京、ひいては日本の成長を阻害するこのような不合理な措置に断固として反対です。
「東京には税収が集中している」「東京は財政的に余裕がある」といった声は以前からあります。都は、こうした「東京だけが豊かだから税金を地方へ回すべき」という単純な見方ではなく、各自治体が地域の課題に応じて自主的・自立的に行政運営できるよう、地方財源そのものを充実させることが重要だと考えています。
都財務局が公開している「都と地方の税収Q&A」は、このような疑問に対して都の考え方を説明するために作成しました。
東京都はいくら税収を失っているのか
累次にわたる地方法人課税の見直しによる「偏在是正措置」によって、
令和8年度だけで年間約1.6兆円
平成20年度以降の累計では約12.6兆円
が都から他道府県へ配分されてきました。1道府県当たりでは毎年度約350億円となりますが、配分後の使途や効果も明らかになっていません。
この財源は本来、都民サービスや都市基盤整備などに活用されるべきものです。
東京都はなぜ偏在是正措置に反対しているのか
そもそも、地方税財政制度においては、地域間の財源の不均衡を調整し、すべての地方自治体が一定の行政サービスを提供できるよう、地方交付税制度が設けられています。地方税と地方交付税等を合わせた人口一人当たりの一般財源額では、東京都は全国平均とほぼ同水準であり、是正すべき偏在は存在しません。
具体的な数字はこちら↓
https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/kuni_tokyo_kyogikai/dai1/siryou04.pdf#page=21
また、令和元年度には、全国に占める都の法人二税の税収シェアが都内総生産シェアを上回っていたことを根拠に、都に法人二税が集中しているとされ、それぞれのシェアを一致させるために税制改正が行われました。その結果、都の税収シェアは26.3%から19.8%まで下落し、その後もシェアの低下は続いているため、現在、都への税収集中が進んでいるという事実はありません。
こうした実態を考慮せず、あたかも税収が都に偏っているかのような前提の下、追加措置に向けた検討を進めることは印象論の域を出ない議論であり、全く妥当ではありません。
東京都は本当に財政が豊かなのか
国などは地方交付税制度上の「財源超過額」を根拠に、都には自由に使える財源が多いと主張します。しかし、「財源超過額」は国の基準で算定した理論値であり、都財政の実態を表すものではありません。
その理由として、基準財政需要額の算定に、
昼間流入人口への対応
大都市の警察・消防業務
首都機能を支える行政需要
高額な用地取得費
などが十分に反映されていないことが挙げられます。
こうした交付税算定の対象となっていない財政需要を考慮すると、実際には、都には国が主張する「財源超過額」は存在しておらず、これをもって都の財源に余裕があるとする議論は誤りです。
都財政には常に余裕があるため、財政運営上の努力を行っていない?
都財政は景気変動に左右されやすく、バブル崩壊後には財政再建団体への転落寸前となりました。これを契機として、都は自主的な財政再建に向けて、徹底的な事業の見直し・再構築や職員定数の大幅削減など、財政構造の転換に全力を挙げて取り組みました。その後も引き続き、無駄をなくす取組を継続しており、令和8年度までの10年間で累計約1兆800億円を確保しています。
一方で、人口構造の変化等により避けることのできない中長期的な財政需要の増加を抱えています。都の試算では、今後30年間で、
社会保障関係経費:累計で約21兆円増加
社会資本ストック維持更新経費:累計で約9兆円増加
が見込まれています。
こうしたことから、都財政が常に余裕があるかのような指摘は事実ではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 東京都は税収が多いのだから地方へ配分すべきでは?
A. 地方交付税制度による財源調整は既に行われ、人口一人当たりの一般財源額も全国平均とほぼ同水準です。このため、都の税源だけを国税化する方法は適切ではありません。
Q. 東京都の行政サービスは他自治体より手厚いの?
A. 地域課題に応じた行政サービスは地方自治の基本です。高校授業料等の実質無償化など、都の取組が全国へ波及した例もあります。全国共通の課題は国が対応し、地方の独自策を後押しすべきです。
Q. 地方財源を増やすためにはどうすればよい?
A. 自治体同士で財源を奪い合わず、地方税財政制度全体を見直すべきです。令和7年度決算において、国税は6年連続過去最高の約84兆円、地方税は5年連続過去最高の約50兆円となるなど、現在、国も地方も税収は大きく増加しています。ところが、現行制度では、税収増の多くが地方交付税の減額と相殺され、新たに使える財源は税収増の25%分にとどまります。また、増えた交付税原資の一部は国の特別会計の借入金償還に充てられています。
都と地方の税収をめぐる議論は、「東京か地方か」という対立構造だけでは語れません。国・地方ともに税収が増える今こそ、地方が自由に使える財源を確保する視点が必要です。
論点は「東京の税収が多いか」ではなく、自治体の努力が地域に還元され、自主的・自立的に行政運営できる制度をどう築くかです。都は、地方全体、ひいては日本の成長に向け、地方交付税制度を含む地方税財政制度全体の抜本的な改革を国に働きかけていきます。
【参考リンク】
※実績等は更新される場合があります。最新情報は東京都公式サイト等をご確認ください。
