老舗和菓子屋4代目が語る東京の「四季」と「和菓子」の魅力

TOKYO UPDATES
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2023年に店舗を移転した「青山紅谷」。和菓子屋ながら青山の地に合うモダンな雰囲気だ
 四季折々の彩りは見た目にも美しく、口に優しい甘さが広がる和菓子。東京・青山の地で100年続く代々の味を受け継いできた老舗和菓子屋の若き4代目青木龍之介氏に、四季を表現する和菓子の魅力を聞いた。
 

名物は豆大福とミニどら

 現在31歳の青木氏が4代目として切り盛りするのは、1923年に曾祖父が青山で創業した「青山紅谷(べにや)」。父親である3代目と日々手作りする和菓子は持ち帰りだけではなく、併設されている甘味処でもいただくことができる。

 和菓子の歴史はかなり古く、縄文時代にまでさかのぼるとされている。

 「平安時代になると、現代でも新年のお祝い菓子として親しまれている花びら餅が食べられていたそうです」

 

 

 

東京メトロ銀座線の外苑前駅から徒歩5分の場所に位置する

東京メトロ銀座線の外苑前駅から徒歩5分の場所に位置する

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青山霊園での墓参り後に立ち寄る客も多いという

青山霊園での墓参り後に立ち寄る客も多いという

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和菓子の持つ繊細な色や形を最大限に表現するため、低反射ガラスが採用されている

和菓子の持つ繊細な色や形を最大限に表現するため、低反射ガラスが採用されている

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顧客の要望から誕生したというミニどら

顧客の要望から誕生したというミニどら

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2代目によって考案された青山紅谷の豆大福

2代目によって考案された青山紅谷の豆大福

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銀杏餅。道明寺でこし餡を包み、少し塩気をつけた銀杏をのせている

銀杏餅。道明寺でこし餡を包み、少し塩気をつけた銀杏をのせている

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秋限定メニューの亥の子餅

秋限定メニューの亥の子餅

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秋色は、みそだまりを使用した蒸し物と栗蒸し羊羹を合わせた和菓子

秋色は、みそだまりを使用した蒸し物と栗蒸し羊羹を合わせた和菓子

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秋の代表的な和菓子として知られる栗蒸し羊羹

秋の代表的な和菓子として知られる栗蒸し羊羹

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栗茶巾。表面をバーナーで少しあぶり、香りづけをしている

栗茶巾。表面をバーナーで少しあぶり、香りづけをしている

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壁には青山紅谷に伝わる和菓子の木型が並ぶ

壁には青山紅谷に伝わる和菓子の木型が並ぶ

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最中や赤飯なども販売されている

最中や赤飯なども販売されている

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花びら餅とは薄く延ばした白餅で白味噌餡、ごぼうを包んだもの。もちろん青山紅谷でも作っているが、同店の名物といえば豆大福とミニどらだ。

 「祖父である2代目が戦後間もない頃、昔からあった豆大福に、米の選別や餅のつき具合、餡の炊き方、塩加減など独自の工夫で改良を加え、弊店ならではの逸品として考案したものです。ミニどらは3代目のオリジナル。実はひいきのお客様からの、結婚式の披露宴で配りたいので普通のどら焼きより小さいものが欲しいというご要望がきっかけです。これが簡単ではなく、小さくしても生地がだれず硬すぎず、引き締まっていながら軟らかく、生地にも隠し味でほんのわずかに醬油を入れたりと、ずいぶん苦労したそうです。おかげさまで二つとも大変な好評をいただき、今では看板商品です」

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店内はシックな雰囲気。木型の奥に作り手が見える空間を演出している

和菓子屋の命は餡

 幼い頃から和菓子が大好きだった青木氏が4代目を意識したきっかけは、海外への関心だった。

 「学生の頃からとりわけ東南アジアが好きで、ベトナムやタイ、ラオスなどをバックパッカーとして旅していました。そこで日本の食文化を海外に広めたいと思うようになったのですが、それならまず自分で和菓子を作れなきゃだめだと先輩に助言され、一人前の和菓子職人になろうと決心したのです」

 修行先として選んだのは、文京区小石川にある和菓子の名店。

 「もちろん修行そのものは大変で、途中で辞めていく同僚や先輩もいました。1年目は店の掃除や配達、お客様の対応ばかりで和菓子作りなどは皆無。2年目から厨房に入ることを許され、4年目にようやく師匠の横で手先を見ながら同じものを作りました。とにかく学びの日々でしたが、振り返ると本当に楽しかった。『和菓子を大好きになれ、大好きでい続けろ』という師匠の言葉は僕の金言です」

 4代目として店に立つ現在も毎日が修行だと語る青木氏は、守り続けるべき伝統と、時代に合わせた変革も大切だと考えている。

 「餡を包む求肥(ぎゅうひ)は、初代からずっと作り方を変えていませんし、製餡の手順もそう。ただ昔と違い、今は甘いお菓子があふれている。だからこそ、餡の塩加減や甘さは微妙に変えています。和菓子屋にとって餡は命。最近は自分で製餡せず仕入れる個人の和菓子屋さんが増えていると聞きますが、僕は小豆選びからすべての作業に丹精を込めています」

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海外訪問がきっかけで4代目を継ぐ決心がついたという青木氏

東京・青山へのこだわり

 そんなこだわりを持って4代目が新たに考案した自信作が、蕨餅(わらびもち)だ。使用する蕨粉は蕨の根茎からわずか3、4%ほどしか取れない貴重なもので、それを強火で練り上げ、さらに叩くようにしてこしを出す。そうして仕上げた蕨餅で滑らかなこし餡を包み、強く焙煎した香ばしいきな粉をふりかけて出来上がりだ。

 「和菓子は茶請け菓子とも言われますが、やはりお茶の邪魔にならないよう甘みや色合いも主張しすぎず、控えめであるべきです。それでも、やはり見るだけで四季を感じていただけるような色合いにもしたい。そのバランスにもこだわっています」

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青木氏が工夫を重ねた蕨餅。見た目も鮮やか

 創業の地である青山にもこだわりがある。近年、ファッションブランドやIT関連の外資系企業も増え、外国人の往来も多いこの地こそ、和の伝統文化である和菓子の魅力を伝えるにはうってつけだと考えている。

 「修行していた小石川は植物園もあり、自然と触れ合える魅力的なスポットでした。青山にも緑や公園が多くあり、都心でありながら四季の移ろいを肌で感じられる。そんな環境の中で季節感あふれる和菓子を召し上がっていただけると、外国の方にも和やかな気持ちになっていただけるのではないかと思います」

 実際、外国人客の割合が年々増え、来日するたびに訪れるリピーターも多いという。目標は、初志でもあった日本文化、和菓子の魅力を海外にも伝えること。すでに今年は5月と11月、インドのムンバイで和菓子作りのイベントに参加し、好評を博した。今後は東南アジア諸国、さらに欧州への展開も視野に入れている。若き4代目の挑戦はこれからだ。

青木龍之介

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東京・青山で生まれ育ち、大学卒業後、海外でも著名な和菓子屋「一幸庵」店主・水上力氏に師事し、修行。現在は家業である老舗和菓子屋「青山紅谷」4代目として店を守りつつ、海外への日本文化発信に挑んでいる。

青山紅谷

https://beniya-aoyama.jp/

取材・文/吉田修平
写真/藤島亮

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