【多摩動物公園】ヘイケボタルの食事情
6月以降だんだん気温が上がり、夏を感じる季節になりました。目から涼をとり、暑さを少しでも和らげることができる昆虫が多摩動物公園の昆虫園にはいます。それは、ヘイケボタルです。
多摩動物公園ではヘイケボタルを1年をとおして展示しています。ホタルに夏のイメージをもつ方も多いと思います。野生では、6月から9月上旬までヘイケボタルの成虫が光りながら飛んでいる姿を見ることができます。そんなヘイケボタルの食事情について今回はご紹介します。
ヘイケボタルは卵から孵化して幼虫、さなぎ、成虫になるまで約1年かかり、成虫は約1週間で寿命を迎えます。その1年間の一生の中で、えさを食べる時期は幼虫の時期だけです。さなぎのときは陸上で土の中にもぐり成虫になる準備をしているため、えさは食べません。羽化し、成虫になってからも水しか飲まないため口器が発達していません。
そんな幼虫の時期に私たちがどのようなえさを与えているかというと、インドヒラマキガイやサカマキガイという巻貝のなかまを用いています。野生のホタルはカワニナを食べる、と聞いたことがある方もいると思います。もちろんヘイケボタルもカワニナを食べますが、当園の飼育展示方法にはインドヒラマキガイなどの方が適しており、これには理由があります。

えさの貝に集まる幼虫
当園では1年をとおして成虫が発光するようすを展示しているため、ヘイケボタルの幼虫をつねに1,500匹以上飼育しています。幼虫は孵化の時期をずらして別々のケースに分けており、孵化したての1mmしかない幼虫からさなぎになる直前の15mmの大きさまで、さまざまな大きさの幼虫がいます。それらの大きさが15倍も違うため、食べるえさの大きさも調整しないといけません。
そこで、幼虫の大きさに合わせた貝を継続的に与えるために、カワニナに比べて繁殖力が強く、飼育のしやすい貝類を与えることにしたのです。幼虫に与える際は、目当ての大きさの貝だけを取り出すために、ざるや目の細かい網などを使用して貝の大きさを選別しています。

3段階の大きさのえさ
飼育係は展示している生きものの飼育だけでなく、それに与えるえさとなる生きものなどを飼育していることもあります。えさとなる生きものをうまく飼育できなければ展示している生きもののえさがなくなってしまうため、こちらも緊張感のある仕事です。
動物園を訪れた際には展示されている生きものがどのようなものを食べているのかに興味をもつと観察する楽しみ方が増えていくかもしれません。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 碓田〕
(2025年07月04日)
多摩動物公園ではヘイケボタルを1年をとおして展示しています。ホタルに夏のイメージをもつ方も多いと思います。野生では、6月から9月上旬までヘイケボタルの成虫が光りながら飛んでいる姿を見ることができます。そんなヘイケボタルの食事情について今回はご紹介します。
ヘイケボタルは卵から孵化して幼虫、さなぎ、成虫になるまで約1年かかり、成虫は約1週間で寿命を迎えます。その1年間の一生の中で、えさを食べる時期は幼虫の時期だけです。さなぎのときは陸上で土の中にもぐり成虫になる準備をしているため、えさは食べません。羽化し、成虫になってからも水しか飲まないため口器が発達していません。
そんな幼虫の時期に私たちがどのようなえさを与えているかというと、インドヒラマキガイやサカマキガイという巻貝のなかまを用いています。野生のホタルはカワニナを食べる、と聞いたことがある方もいると思います。もちろんヘイケボタルもカワニナを食べますが、当園の飼育展示方法にはインドヒラマキガイなどの方が適しており、これには理由があります。

えさの貝に集まる幼虫
当園では1年をとおして成虫が発光するようすを展示しているため、ヘイケボタルの幼虫をつねに1,500匹以上飼育しています。幼虫は孵化の時期をずらして別々のケースに分けており、孵化したての1mmしかない幼虫からさなぎになる直前の15mmの大きさまで、さまざまな大きさの幼虫がいます。それらの大きさが15倍も違うため、食べるえさの大きさも調整しないといけません。
そこで、幼虫の大きさに合わせた貝を継続的に与えるために、カワニナに比べて繁殖力が強く、飼育のしやすい貝類を与えることにしたのです。幼虫に与える際は、目当ての大きさの貝だけを取り出すために、ざるや目の細かい網などを使用して貝の大きさを選別しています。

3段階の大きさのえさ
飼育係は展示している生きものの飼育だけでなく、それに与えるえさとなる生きものなどを飼育していることもあります。えさとなる生きものをうまく飼育できなければ展示している生きもののえさがなくなってしまうため、こちらも緊張感のある仕事です。
動物園を訪れた際には展示されている生きものがどのようなものを食べているのかに興味をもつと観察する楽しみ方が増えていくかもしれません。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 碓田〕
(2025年07月04日)