【多摩動物公園】いでよ、モグラ塚!──モグラ塚の展示に向けた試み

東京ズーネット
「公園にある土が盛り上がった場所は、モグラの巣ですか?」「うちの畑の土がぼこぼこしてて、モグラのしわざだと思う!」。

 多摩動物公園にある「モグラのいえ」では、来園者の方からこのような質問を受けることがあります。モグラは身近な哺乳類ですが、地中で一生をすごすため、姿を見たことがある方は少ないのでしょう。

 公園や畑の土が盛り上がったり、ぼこぼこしたところは、巣ではないのですが、おそらくモグラのしわざです。これは「モグラ塚」というもので、モグラの痕跡ではいちばん身近なものです。多摩動物公園でも園内にモグラ塚はたびたび出現します。モグラ塚は、モグラが地中に通路や休憩場所などを掘り、残土を地上へ押すことでこのような現象が起きます。なので、周辺の地中にはモグラがいるのはおおむね間違いないでしょう。
 

多摩動物公園内のモグラ塚

 じつは飼育をしていても、モグラ塚ができることがあります。公開展示していないモグラの飼育ケースですが、構造上、余分な土を外に出すことがあり、それがモグラ塚のようになります。今回、これをモグラのいえに再現できないか試してみることにしました。
 

非公開の飼育ケースにできたモグラ塚

 モグラのいえの展示場の飼育ケースは非公開のものとは違い、土が出ないようにしているので、くふうが必要です。飼育ケースの中には土が入っていて、モグラはその中で土を掘って生活します。飼育ケースから垂直に筒状の通路が設置されていて、その中を通って、餌場などに移動することができますが、飼育ケースから直接伸びている通路はアクリルパイプなので土が外に出ることはありません。

 まずは、展示個体の中から、ふだんから活発にトンネルを掘っていてモグラ塚をつくってくれそうなアズマモグラとコウベモグラを1個体づつを選び、今回の挑戦の対象としました。

 最初に、コウベモグラから展示場に飼育ケースとは別に水槽を用意し、通路を接続して、中に土とえさを入れて誘引して掘らせ、モグラ塚をつくらせようとしました。結果、大失敗。まったく掘りません。そもそも、自分のすみかを整えるために掘るようで、すみかでないと関心を示さないようです。

 次は、アズマモグラ展示場の飼育ケースから直接伸びるアクリルパイプの通路の一部に穴をあけ、テーブルから余分な土を出させるように仕向けました。
 

加工した飼育ケースの通路。堀った土が穴から出るように加工しました

 こちらは何とか成功。展示場にモグラ塚が出現です。試みから2日後には高さ3cmほどのモグラ塚ができました。モグラ塚は少しずつ大きくなり、最終的には高さ5cmほどまで成長しました。このアズマモグラの個体に関しては、もともと土を掻き出すことがある個体だったこともあり、作戦はうまくいったようです。
 

展示場にできたモグラ塚。テーブルの上に土の山ができました

 モグラのいえでは、コウベモグラとアズマモグラの2種類を展示していますが、土の中に隠れたり、別の場所へ移動していたり、よく探さないと姿をうまく観察できないこともしばしばです。

 今回モグラ塚を作成した理由は、モグラたちが見えづらい状況でも、ふだんから野外でもみなさんが観察できるモグラの身近な痕跡を見ていただくことで、モグラに関心をもっていただくことを目的としました。まだモグラ塚は正式な展示とはなっていませんが、改良を加えてうまくつくれるようになったら展示を開始する予定です。
 

モグラ塚がつくられた展示場。最終的には高さ5cmほどまで成長しました
※現在アズマモグラの展示は中止しています。
 コウベモグラについても個体の状況により展示を中止する場合があります。ご了承ください。

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〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 川上〕
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