【多摩動物公園】今年もニホンコウノトリが繁殖しました!

東京ズーネット
 多摩動物公園では、2025年5月20日と22日に、同じ巣でニホンコウノトリのひなが1羽ずつ孵化しました。これで、当園で飼育するニホンコウノトリは50羽になりました(オス23羽、メス25羽、今回生まれたひな2羽はまだ性別不明)。

 ニホンコウノトリは、昔の絵画や書物にたびたび登場していることから、古来より私たち日本人になじみの深い鳥として知られている鳥です。しかし、明治時代あたりから狩猟や森林の減少・農薬の散布などによってコウノトリの生息環境が悪化し、急激に個体数が減少して、国内のコウノトリは1971年に絶滅してしまいました。

 多摩動物公園では、1972年に上野動物園が導入した個体を譲り受け、飼育を開始しました。そして1988年に国内の動物園で初めて繁殖に成功しました。その後、現在まで38年連続して繁殖に成功しています。

 ニホンコウノトリは、今では多摩動物公園以外のさまざまな施設で飼育・繁殖がおこなわれ、飼育下で繁殖した個体を野生に戻す事業もおこなっています。その結果、野生でも繁殖するようになり、徐々に生息数を増やし始めています。2024年7月31日現在、野生下の個体数はオス209羽、メス222羽、不明45羽、合計476羽と報告されています。
 

コウノトリのひな(手前が孵化2日目、奥が孵化0日目)

 しかし、野生のコウノトリが今後も増えていくためのえさ(ドジョウやカエルなど)は、生息環境が減っています。また、野生でも近親交配の問題など、まだまだ油断できない状態です。

 動物園では、遺伝的多様性を維持できるよう、血統などを管理して繁殖計画を立てています。 今回繁殖したペアは一昨年、コウノトリ舎(園内マップ26)の「お見合いエリア」で、遺伝的な組み合わせを考慮したオスとメス3羽ずつをひとつのケージに入れ、コウノトリ自身に好きな相手を選ばせるお見合いの結果できたペアです。

 ペア形成後、初めての繁殖となるため、無事にひなを孵すことができるか、ひなが孵っても無事育てることができるのかなど、飼育担当者の心配をよそに、無事元気なひなを孵化させ、しっかりと育てています。メスがひなを抱いている最中に、オスが早く交代するようくちばしで優しくメスの顔や背中をつついて催促するなど、少しオス親が張り切りすぎているところが心配ですが、雌雄ともに丁寧にひなを抱き、えさであるドジョウを熱心に与え続けているので、まずは一安心です。

 この親子は、コウノトリ舎内の園路からもっとも遠いところにある「繁殖エリア」にいるため、ひなを見ることは難しいかもしれませんが、2羽が無事に成長し、新たな生命をつなぐことに期待していただければと思います。
 

繁殖エリア

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 川鍋〕

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