「みんなトクする」三方良しのビジネスモデルで社会課題を解決(株式会社クラダシ)

目次
ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」とは
株式会社クラダシ(以下、クラダシ)は、フードロス削減を目指すソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営しています。
賞味期限が近付いた商品やパッケージに傷や汚れのある商品、味や品質に問題がないにもかかわらず「規格外」となったために廃棄されてしまう食品などをクラダシが買い取り、オンラインでユーザーにお得な価格で販売するプラットフォームの運営という、事業内容そのものがサステナブルな会社です。
また、「Kuradashi」で買い物をすると、購入金額の1~5%が社会貢献団体の寄付や支援に役立てられる仕組みになっているのがユニークな点です。メーカーや生産者はフードロス削減を実現し、ユーザーはお得に買い物を楽しめ、さらに社会貢献活動にもつながる「三方良し」のビジネスモデルです。
現在、「Kuradashi」には常時平均4,000商品が取り揃えられており、出品する「パートナー企業」は1,990社、ユーザーは30~60代の女性を中心に57万人を突破しています(2024年12月時点)。
2014年の創業から10周年に当たる昨年、代表取締役社長CEOに就任した河村晃平社長は、自身が入社を決めた経緯を次のように振り返ります。
「創業者で現・代表取締役会長の関藤とは、以前中国に駐在していた時に知り合いました。利益を追求しつづけることに違和感を覚えていた私は、『Kuradashi』のビジネスモデルに感銘を受け、ぜひ関藤とともに取り組みたいと考え、2019年に入社しました。関藤から声をかけてもらった翌日には入社を決めていましたね」

つながるソーシャルグッドマーケット
「もったいない」だけではないフードロス問題
フードロスが社会課題として取り上げられるようになり、私たち国民も以前より「もったいない」の意識を持つようになりました。しかし、実際に国内外でどのくらいフードロスがあるのかについては、よく知らない方が多いのではないでしょうか。
現在、世界ではまだ食べられる食料が年間約10億トンも廃棄されており、日本では年間約472万トンが廃棄されています(※1)。国民一人当たりのフードロス量に換算すると、国民全員が毎日おにぎり1個分の食料を捨てている計算になり、フードロスによる国の経済損失は、2022年度で約4兆円に上ると推計されています(※2)。
河村社長は「この事実が『もったいない』だけではなく、地球環境にも深刻な影響を与えていることも、あまり知られていないかもしれません」と語ります。
「フードロスの廃棄には、ごみの焼却に伴い大量の温室効果ガスが排出されます。フードロスが原因で排出される温室効果ガスは世界全体の排出量の8~10%で、実は自動車の温室効果ガス排出量に匹敵する水準なのです。フードロスは、気候変動への対応やサーキュラーエコノミーの実現に向けて、解決しなければならない極めて重要な課題で、世界有数のフードロス大国である日本は、より真摯にこれを受け止め、対策を講じなければならないと考えています」
(※1)農林水産省及び環境省推計(2022年度) (※2)消費者庁『食品ロス削減ガイドブック』(2024年度版)

各方面から評価されるクラダシのビジネスモデル
こうした社会的背景の中、クラダシは「日本で最もフードロスを削減する会社」をビジョンに掲げ、創業以来、急速に事業を拡大しています。特に「社会性」「環境性」「経済性」の3つ全てを成り立たせた「三方良し」のビジネスモデルは各方面から高く評価され、これまでに環境省や農林水産省、消費者庁、東京都、民間企業などから多数の表彰を受け、取り組み事例は『環境白書』や『消費者白書』にも掲載されました。
2022年には、アメリカの非営利団体B Labから与えられる「B Corp」という認証を取得しました。これは、環境や社会に配慮され、かつ公益性や持続可能性に優れた企業に与えられる認証で、評価基準や審査が厳しく、日本で取得している企業はまだ50社ほどにとどまります(2025年1月現在)。クラダシが認証を取得したのは日本で13番目と比較的早く、2023年にはB Corp認証を取得した企業として初めて東京証券取引所グロース市場に上場しました。
河村社長はB Corp認証の価値について次のように語ります。
「弊社は『Kuradashi』のビジネスモデルをさらに成長させることを目的に、足掛け1年以上をかけて認証を取得しました。日本では、B Corp認証の認知度はまだ高くありませんが、ヨーロッパなどでは知名度や信頼性の高い認証となっています。昨今は世界中で環境意識が高くなっているため、B Corp認証の取得を目指す企業は増加しつつあります。


さまざまな社会貢献のかたちをユーザーが自由に選択
「Kuradashi」では、会員登録をすると「マイページ」で自身の購入実績に応じたフードロス削減量や社会貢献団体への支援額が数字で見られる仕組みになっています。ユーザーからは「自分の社会貢献度が分かるのがうれしい」との声が寄せられており、河村社長も「『累計何トンのフードロスを削減したよ』と、友人が自らのマイページのスクリーンショットを送ってきてくれることがあります」と笑顔を見せます。 「『社会貢献活動に協力してください』と押し付けるのではなく、自分のための買い物が実は社会貢献につながっているという、楽しさを感じながらご利用いただけていると思います」と河村社長。
創業以来「Kuradashi」を通して実現したフードロス削減量は、累計25,333トン、これに相当するCO2削減量は67,159t-CO2、経済効果は123億2,580万円に上ります。さらに、社会貢献団体への支援額は累計1億5,000万円を突破しました(2024年9月30日)。
支援団体は、環境や貧困、社会福祉や災害支援など11の中からユーザーが自由に選ぶことができます。その支援先の一つとして、クラダシは2021年に「クラダシ基金」を創設しました。これは、クラダシ自らが社会貢献活動を行うために創設した基金で、具体的には、地方創生事業、フードバンク支援事業、教育事業、食のサステナビリティ研究会の4つの社会貢献活動に充てられています。
例えばフードバンク支援事業では、クラダシが全国のフードバンクと連携し、メーカーなどから提供された食品を、ハブ役となって各フードバンクに公平かつ安全に配給する活動をしています。また、地方創生事業では、学生が人手不足に悩む地方の農家を訪れ、収穫体験を通してフードロス問題や地方創生について考える社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を行っています。学生の旅費などはすべてクラダシ基金から支援し、農業支援で収穫したものは「Kuradashi」で販売、売り上げの一部をクラダシ基金に回し、次回以降の同事業に活用しています。
河村社長は、このクラダシチャレンジが人材確保にもプラスに働くことがあると明かします。
「農家でインターンを経験した学生が、弊社の本社でもインターンとして勤務を希望することがあります。近年は、学生が企業を選ぶ際、サステナブルな取り組みをしているかどうかという点も重視する傾向にあるため、クラダシチャレンジのような取り組みは良い人材を確保する意味でもさらに認知度を上げていきたいですね。企業は『人』が全てですから」


これまで北海道から沖縄まで全国計49回(2024年12月時時点)、のべ316名が参加しているクラダシチャレンジ
「食」の分野を超えて持続可能な社会のために
クラダシは会社のミッションに「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」を掲げ、常に新たな挑戦を続けています。今年1月には、物流の「2024年問題」などによるフードロス増加を解消するため「物流サービス」を開始しました。メーカーや卸業者などの物流業務を一括で請け負い、余剰在庫の買い取りや、クラダシが提携する150以上の物流拠点から最適な拠点の提案などを行います。
さらに今年からは、蓄電池事業を始めとした再生可能エネルギー事業にも参入します。河村社長は次のように展望を語ります。
「社会課題は世の中にたくさんありますから、弊社も取り組みを『食』だけにとどめず、新たに再生可能エネルギーの分野に進出することにしました。今後も既存の事業の成長を推進するとともに、新規事業の発展と拡大に努めていきます。そして、何十年、何百年と続く私たちの後世に、貴重な資源を残したいと考えています。事業内容がサステナビリティに直結していない企業様も、さまざまな領域から社会課題の解決に取り組むことが可能だと思います。その一つとして、よろしければご一緒に再生可能エネルギー事業に取り組んでいただけるとうれしく思います」

会社概要
社名: 株式会社クラダシ
所在地: 東京都品川区上大崎3-2-1 目黒センタービル5F
創業: 2014年7月
事業内容: ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」の運営
代表取締役社長CEO:河村晃平
従業員数: 59名(2024年9月30日時点)
ホームページ:https://corp.kuradashi.jp/(企業サイト)