インドサイのターゲットとクリッカーを利用したトレーニング[続報]
多摩動物公園ニュース
前回の記事ではトレーニングの考え方や使用方法・目的を紹介しましたが、今回は、インドサイ3頭の現在のトレーニング進行状況をご紹介します。
まず、トレーニングの号令についてです。現在は「はな(鼻)」「ターン」「口開けて」の3種類の号令を使っており、それぞれの号令に基づくサイの行動は以下のとおりです。
はな :飼育係が呼ぶ場所でターゲットに鼻をつけさせます。
ターン :柵越しに飼育係と対面して、体を正面に向けさせます。
口開けて:えさを見せて高く上げる合図とともに口を開けさせます。歯のチェックなどするためです。少しずつ、長く口を開けていられるようにします。
こうしたトレーニングを進めていくなかで、サイは床に置いたえさをすばやく拾えないこと、咀嚼がのんびりで個々のペースで進めないといけないことなど、いろいろことがわかってきました。


現在、いちばんトレーニングが進んでいるのは「ゴポン」(メス、22歳)です。食欲旺盛で、気分のむらが少なく、トレーニングに応じてくれます。現在できているインドサイのトレーニングメニューは、飼育係がゴポンとともに試行錯誤してつくったものです。たいへん優秀なゴポンです。
次に、オスたちです。「ビクラム」(21歳)は食欲旺盛で動きが早く、トレーニングにも意欲的ですが、待つことは苦手です。現在、「はな」の号令で柵沿いに移動ができますが、動きが早いときはわざと床にえさを置き、食べているあいだに飼育係が移動して次の号令を出します。少し体が柵から離れがちですが、もう少し経験を積めばより近くに体を寄せてくれるでしょう。以前は、3枚ほど積み上げたマットの上に足を乗せることもできました。ビクラムは、新しい動きをつくるより自信を持っている動きに条件を追加していく方法がいいようです。見ているとひとつひとつ真剣に取り組むビクラムです。
最後に、高齢で体の大きい「ター」(25歳)です。最近は目があまり見えていないようすで、ほかの個体と同じようにトレーニングを進めると、ターゲットの場所がわからずに通りすぎたり、落ちたえさが拾えずにいらついたりすることが多いので、やり方を工夫しながら進めています。ターゲットが見えないことが問題なので、敏感な耳を利用して音や声で呼び、目的の場所に来たときにターゲットを鼻に軽く当てるようにしました。すると、あまり時間をかけず柵沿いに移動ができるようになりました。えさを探すのに顔が下がりがちなので、口の高さを上げるためにもターゲットを使い、飼育係にとって危険なく、サイに褒美を与えられように教えています。動きも、食べるのもマイペースですが真剣に取り組む、のんびり屋のターです。
まだ始まったばかりのトレーニングですが、サイの食べ方のようにのんびり応援してください。
【動画】インドサイのトレーニング──「口開けて」
【動画】インドサイのトレーニング──バック
【動画】インドサイのトレーニング──ターン
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 担当班〕