【多摩動物公園】ボルネオオランウータン「キーボー」の誕生

東京ズーネット
 2025年7月11日、多摩動物公園のボルネオオランウータン「キキ」(メス、24歳)が出産しました。父親は「ボルネオ」(オス、40歳)です。

 7月10日の朝、陰部からの出血が見られました。想定していた出産予定日より早く、当初は流産や早産を疑いました。キキ自身はとくに気にすることもなく、採食や動きはいつも通りでした。夕方には出血量が減り、粘液が混じっていました。

 翌日の朝、床に出血の痕があり、キキは台の上で丸くなっていました。これは大変なことでは?と獣医に連絡し観察をしていると、キキが起き上がりこちらを向くと、子をしっかりと抱いているのを確認しました。それを見て、皆、胸をなでおろしたのを思い出します。

 子はすでに目が開いており、瞳は青みがかった黒色で、まだよく見えていないようでしたが、キョロキョロと動かしていました。出産当日に子の泣き声が聞かれ、乳首に吸い付いているのが見られ、同時に吸引音も聞こえ、ひとまず安心しました。後日、陰部の外見からオスと判断しました。


母「キキ」と「キーボー」(2025年8月15日撮影)

 キキは3回目の出産であり、とくに戸惑うことなく子育てをしています。乳首から母乳がしみ出ているのを確認し、子が乳首に吸い付いたあと、お腹が膨れ、目をつぶって眠っている姿がよく見られ、母乳が足りていると考えられました。ミルクを飲めている証拠のミルク便(うす黄茶色の便)も見られ、正常に消化吸収しているものと思われます。

 キキが子をしっかり抱いているので体重測定などはできませんが、飼育係はこれらのことや子の顔つきや動きなどの観察から、順調に育っていると確信し、その成長を見守っています。


授乳中のようす(2025年8月17日撮影)

 子の名前は、母親の名前から「キ」、父親の名前から「ボ」をもらい、希望とかけて「キーボー」と名づけました。

 今回の繁殖は、隣室にいる「チェリア」(メス、10歳)に、交尾から出産、子育てまでを見て学習してもらい、チェリア自身の繁殖に繋げるという目的もありました。柵越しに出産と子育てを目にしていましたが、興味津々というわけではありませんでした。チェリアは人工保育で育ち、オランウータンらしさを身につけるために「ジュリー」(メス、享年60歳)に預けられ育ってきました。今回の繁殖がチェリアの今後へ繋がることを願っています。

 ジュリーは、今年の8月19日に死亡しました。キキの出産時には体調を崩していましたが、子の声や姿を認識していたと思います。ジュリーはオランウータンの子どもが大好きで、他個体の子どもとよく遊び、連れて帰ってしまったこともあるそうです。キキの子を見て、元気を取り戻してくれたらと思っていましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。多摩のオランウータンたちを空から見守ってくれるよう祈っています。

 キーボーは、まだ母親の胸にしがみついているだけですが、ゆっくりと成長し、さまざまな姿を見せてくれるでしょう。担当者や皆で温かく見守っていきます。


ハンモックの上ですごす親子(2025年8月18日撮影)

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 オランウータン担当〕

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