地域とつながるスポーツ・健康福祉の取り組み

東京都立大学
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東京都立大学健康福祉学部では、荒川キャンパスを拠点に、パラスポーツの振興と地域貢献に力を入れています。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、パラスポーツへの理解を深め、誰もがスポーツを楽しめる環境づくりに取り組んでいます。体験教室の開催と動画配信の二つのアプローチで、地域から全国へ、パラスポーツの魅力を発信しています。

キービジュアル

二つの柱で展開するパラスポーツ事業

健康福祉学部のパラスポーツ事業は、地域での体験教室と全国への動画配信の二つの大きな柱で展開されています。
体験教室は、近隣地域にお住まいの方を対象に、荒川キャンパスにて実際にパラスポーツを体験できる機会を提供しています。2017年からスタートしたこの取り組みは、当初は60歳以上の方を対象にしていましたが、現在では年齢や障がいの有無を問わず、誰でも参加できる場となっています。特に人気なのがボッチャの体験教室です。2016年の体育館改修を機に本格化したこの取り組みでは、毎回、車いすユーザーや小学生、高齢者まで、幅広い世代が自然と集まり、楽しく汗を流しています。
一方、動画配信は、全国をターゲットに情報発信しています。年間3〜4本のパラスポーツ関連動画を制作し、6年間で41本の動画を作成しました。体験教室の参加が難しい方にも情報を届けるため、動画配信を通じて障がいやパラスポーツへの理解を全国に広げるとともに、大学の社会貢献活動を発信しています。

ボッチャ体験教室
ボッチャ体験教室
パラスポーツの解説やパラリンピアンのインタビューなど配信
パラスポーツの解説やパラリンピアンのインタビューなど配信
パラスポーツの解説やパラリンピアンのインタビューなど配信
※動画はこちらをご覧ください
都立大Channel
健康福祉学部×パラスポーツ
https://www.youtube.com/playlist?list=PL8oGxvf_g9smS7RQq_yLANj9nalfO9frl

東京パラリンピックを契機に広がる理解

2013年に東京2020オリンピック・パラリンピック開催が決定してから、社会の受け入れ態勢は大きく変化しました。「障がい者スポーツ」から「パラスポーツ」へと呼び方が変わり、認知度も飛躍的に向上しました。実際に見たことはなくても、ニュースやメディアで目にしたことのある人が圧倒的に多くなりました。
都立大の学生の中にも、「パラスポーツに関わりたい」と明確な目標を持って入学する学生が現れるようになりました。高校生の時点でそうした意識を持っているということは、パラリンピックを契機とした社会の変化を象徴しています。
健康福祉学部では、パラスポーツは、高齢化が進む中で高齢者や中高年の方々にも受け入れやすいものだと捉え普及活動をしています。「フレイル」という言葉が一般化してきましたが、病気ではないものの少しずつ筋力が衰えることへの対策として、スポーツが果たす役割は大きいといえます。

地域との強い絆―荒川区との包括協定

健康福祉学部の大きな特徴は、地域との密接な関係性にあります。特に荒川区とは健康福祉活動に関する包括協定を締結し、区の事業と大学の知見を結び付けた取り組みを展開しています。これまでにさまざまな活動を行うなど、双方が連携して取り組む関係が築かれています。
その代表例が「ころばん体操」です。高齢者の転倒による骨折を防ぐため、座ったままできる体操や足腰を鍛えるエクササイズを、定期的に荒川キャンパスの体育館で開催しています。荒川区が複数の施設で実施するこの取り組みの中でも、都立大の体育館は広さの面から最も多くの参加者が集まる会場となっています。

「ころばん体操」の実施風景
「ころばん体操」の実施風景

医療従事者を育てる健康福祉学部の特色

健康福祉学部は、看護学科、理学療法学科、作業療法学科、放射線学科の4学科で構成され、看護師、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師などの国家資格を目指す学生たちがそれぞれの学科で学んでいます。卒業生の多くは病院などの医療機関に就職しますが、近年では住宅メーカーの設計部門に進む学生などもいます。車いすユーザーが快適に暮らせる住宅を設計する際、リハビリテーションの知識を持つ学生が、障がい者の目線で動線やバリアフリー設計を考える役割を担っているのです。
4学科の中で、スポーツに関連した学びや活動があるのは、理学療法学科と作業療法学科です。最近では、プロスポーツのトレーナーを目指して入学する学生もおり、オープンキャンパスでは「一流の選手と一緒に海外に行くトレーナーになりたい」という高校生も訪れます。スポーツ医学の知識を持った医療従事者への需要が高まっている証といえます。
都立大の学生は、首都圏だけでなく、北は北海道から南は沖縄まで、全国から集まっています。多様な背景を持つ学生たちが、荒川キャンパスで地域と密接に関わりながら学び、日本で活躍する医療従事者として、さらには国際的な医療人材へと成長することを目指しています。また、パラスポーツへの理解と実践力を持った人材となることが期待されています。

スポーツを通じて、誰もが活躍できる社会を
「信太 奈美 准教授
信太 奈美 准教授 健康福祉学部 理学療法学科

東京都立大学 健康福祉学部理学療法学科 准教授。理学療法士。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程修了。博士(スポーツ科学)。専門は障がい者スポーツ、脊髄損傷者のリハビリテーション、車いすユーザーの環境支援。日本パラリンピック委員会医学委員会アンチ・ドーピング部会委員などを務める。

Q. パラスポーツとの出会いを教えてください。

学生時代に車いすバスケットボールに出会ったことがきっかけです。私自身が小学生の頃からバスケットボールを続けてきたこともあり、車いすバスケットボールのボランティアプログラムチームにボランティアで参加しました。立ってやるバスケットボールと座ってやるバスケットボール、その両方に関わる中で、車いすバスケットボールならではの魅力に引き込まれていきました。
車いすバスケットボールは、基本的なルールが通常のバスケットボールと同じなので、バスケットボールとしての面白さはそのままです。でも、障がいの程度による持ち点制度があるんです。チーム5人の障がいの合計点数を一定にするルールがあるため、障がいの重い選手も軽い選手も平等に出場できます。戦術面では、障がいの程度、つまり選手にスピードや座高、ボールを扱える範囲の差があることでマッチアップの有利不利が変わりますし、それを利用した戦術はゲーム展開に影響します。考える楽しさと戦術の多様性が魅力です。

Q. 現在の研究テーマについて教えてください。

主に競技力向上、車いすや補装具の調整、スポーツ障害の予防と対策に取り組んでいます。パラアスリートの場合、スポーツによる怪我が日常生活に直接影響する点が重要です。例えば、片足の不自由な人が反対側の脚を怪我すると歩行が全く困難になります。健常者以上に怪我の予防と管理が重要なのです。
「パラスポーツを競技として強化する必要があるのか」という問いに対しては、機会の平等という観点から明確に「ある」とお答えできます。障害があることで様々な機会が制限される中、スポーツをやる機会も平等に保障されるべきです。そしてスポーツ愛好者の中にも、競技として高みを目指したい人と、楽しくレクリエーションとして取り組みたい人がいます。健常者に存在する選択肢が、障がい者にも同様に用意されているべきだと考えています。

Q. 東京パラリンピックを契機に、どんな変化がありましたか?

2013年の開催決定以降、社会の受け入れ態勢が大きく変化しました。バリアフリーやユニバーサルデザインは徐々に進んでいましたが、特に公共交通機関や情報収集手段で顕著な変化がありました。
そうした機運を追い風に、私は都市環境学部 建築学科の教授と共同で、体育館に車いすがどの程度傷をつけるかという研究を実施しました。「車いすは床を傷つけるから使用不可」という慣習に対して、定量的なデータを提供することで意識の変化を促したかったのです。研究の結果、レクリエーションレベルでは大きな傷は発生せず、トップレベルの激しいプレーでも管理可能な範囲であることが明らかになりました。タイヤ跡は付きますが、すぐに清掃すれば除去できることも実証しました。
スポーツは楽しく、ゲーム性があるため、健常者と障がい者の接点として入りやすい分野です。ただ、より速く、より高く、より強くを追求するスポーツの性質上、障がい者は相対的に不利な立場に置かれることも事実です。でも、ルールを変えることで、障がい者と健常者が一緒に楽しめる場を作ることができます。さらに競技においても障がい者が健常者に勝つことも当然あり、このような体験が固定観念を変えるきっかけになります。

Q. 今後、どのような取り組みを目指していますか?

「誰もが身近にスポーツができる環境づくり」です。少子高齢化社会において、誰もが気軽に身近な場所でスポーツに親しめることが重要です。スポーツは心身の健康だけでなく、コミュニケーションや地域づくりにも貢献します。
施設側が受け入れをためらう理由の一つに、責任の所在の問題があります。受け入れると宣言することで責任を負わなければならないという懸念から、消極的になっているケースがあります。また、受け入れるには「パラスポーツの専門知識が必要」という固定概念も障壁となっています。
この課題に対して、私はパラスポーツと健常者のスポーツ、それぞれを別々に研修するのではなく、統合した教育プログラムを提案しています。スポーツに関わるすべての人が、障がいを持つ人についてある程度の知識を持つようになれば、受け入れがしやすくなります。教育カリキュラムや研修体系そのものを変えていくことで、社会全体の意識改革を促したいと考えています。

東京都立大学健康福祉学部が取り組むパラスポーツ事業の実例

東京都立大学健康福祉学部では、パラスポーツ普及事業を精力的に展開しています。荒川キャンパスでは、ボッチャやパラバドミントン、車いすポートボールに加え、近年注目を集めるモルックの体験教室も開催し人気を集めています。
また、荒川・南大沢の両キャンパスで、東京2025デフリンピックに出場した選手・監督を講師として招いたデフフットサル体験教室を開催しました。障がいの有無やスポーツの経験を問わず幅広い年齢層の方々が競技を身近に体験できる場を創出しています。
パラアスリートへのインタビュー動画をYoutubeで配信するなど、情報発信にも力を入れています。共生社会の実現の一助となるよう教育研究機関ならではの多角的なアプローチが特徴です。

2025年度 パラスポーツ体験教室参加者人数

・ボッチャ体験教室 359名
・モルック体験教室 124名
・パラバドミントン体験教室 29名
・デフフットサル 86名
・家族deボッチャ交流戦 21名
・車いすスポーツ、車いすポートボール体験教室 20名

2026年度 パラスポーツ体験教室開催スケジュール(予定)

・ボッチャ体験教室
 〈2026年〉4/18、5/16、6/20、7/18、8/15、9/19、10/17、11/21、12/26
 〈2027年〉1/16、2/20、3/27
 協力団体:王子ホールドスターズ
 

・モルック体験教室
 日程調整中
 協力団体:一社)ZEN
 

・パラバドミントン体験教室
 日程調整中
 協力団体:東京障がい者バドミントン連盟
 

・車いすポートボール体験教室
 日程調整中
 協力団体:ケイアイチャレンジドアスリートチーム
 

・デフスポーツ
 日程調整中
 

・フレイル予防体操
 日程調整中
 

2026/4/1時点

・詳細はこちら
健康福祉学部パラスポーツ事業HP

総合HP教員紹介ページ/
信太 奈美 (シダ ナミ)准教授 健康福祉学部 理学療法学科

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