環七の下にはなにがある?水害から街を守る巨大トンネルを探検
たくさんの車が行き交う環状七号線(環七)の真下に、巨大なトンネルがあることを知っていますか? 普段は誰も通ることのないこの地下トンネルを歩く、インフラツアーに参加してきました。階段をひたすら下りてたどり着いた先には、ひんやりとした空気と圧倒的なスケールの空間。そして暗闇に響く音や光の演出、最後には満天の星空まで・・・。
今回は地下43mで味わった、“日常のすぐ下にある非日常”体験をレポートします。
都市型水害から街を守るためには、都市型ならではの方法で
スタートとなる会場は、善福寺川と環七が交わる場所のすぐ近くに建てられている「善福寺川取水施設」。この回のツアー参加者は28名、大人の社会科見学といった内容ですが、親子連れの姿も多くみられました。まずはガイダンスで説明動画を視聴し、模型を使った解説や操作室の見学で調節池の役割や仕組みについて学びます。
コンクリートやアスファルトに囲まれた都会では、地下に水が浸透しにくく急速に水が川に集まるため、浸水被害も深刻です。都心の河川はすぐ近くに住宅やビルがあるため、増水に備えて河川そのものを広げるには限界があります。そこで流域近くの公園や幹線道路の下など、地下空間に一時的に水を溜めるための施設があちこちに造られているのです。
善福寺川は通常おだやかな流れですが、集中豪雨や台風などのときにはたちまち水位が上がり、善福寺川やその合流先である神田川がたびたび浸水被害を受けていました。そこで、川の水位が上がったときにタイミングよく水を取り入れ、一時的に貯めておく施設が「神田川・環状七号線地下調節池」です。
環七に沿って建設された巨大な地下トンネルは、善福寺川だけでなく、妙正寺川、神田川の取水施設とつながっていて、善福寺川取水施設では3つの取水施設における取水・排水等の操作を一元的に管理しています。
現在は北側に延伸して、目白通りの地下にある白子川地下調節池とつなげる工事を進めています。それができると総延長13.1km、貯留量約143万㎥の超巨大調節池になる予定です。さらに将来的には南側へとトンネルを伸ばし、海までつなげる計画もあるそうです。
いよいよ巨大トンネルの中へ。暗闇空間で見えるもの
調節池があるのは地下43m、一般的なマンション14階相当になる222段の階段を延々と下りていきます。そこにはポンプが2台設置されていて、調節池で取水した後、河川の水位が下がったら、水をポンプでくみ上げて川に戻す役割があります。
重厚な扉をくぐると、急にひんやりとした空気に包まれて、巨大な穴が垂直に貫いているのが見えます。ここは減勢池(げんせいち)と呼ばれる部分で、水たまりにすることで川から大量に落ちてくる水の勢いを抑えるのだそう。また、施設が住宅地にあるため、取り込んだ水をトルネード状に落とすことで、水が落ちる際の振動や音を軽減する仕組みになっています。
そして反対側には直径6.4mのトンネルが約150m続いています。これは環七の真下にある調節池へと続く導水連絡管と呼ばれるトンネルです。緩やかなカーブを描いていて先が見えないところが、なんともいえないワクワク感を誘います。そして無駄なものが一切ない構造物の美しさというのにもひかれてしまいます。
少し進むと、突然カラフルな壁が出現。これは地元の小学生が地上で描いた絵をトンネル建設時に貼り付けたものだそうです。普段メンテナンスをしている方も、これを見て心を和ませているのでしょうか。
トンネルの突き当りまで行くと、左右にさらに巨大なトンネルが広がります。ここがツアーのメイン会場、直径12.5m、長さ4.5kmの「神田川・環状七号線地下調節池」。貯留量は54万㎥、25mプール約1800杯分の水をためることができます。
ここからはしばしお遊びタイム。トンネルのカーブを利用してユニークな影絵を作ったり、インスタグラムならぬイケスタグラムの枠で撮影をしたり、こだまが返ってくるやまびこ体験をしたりと、暗闇とカーブが作り出すトンネル空間を活かした遊びを体験しました。
過去にはここでクラシックの生演奏や、阿波踊り(地元杉並区ならでは!)も行われたそうです。
地下43メートルから、はるかかなたの星と地球を想う
そして最後の体験は、このツアーで特別に開催されるプラネタリウム。仰向けに寝転がって、天井を見上げると都心ではなかなかお目にかかれない満天の星空が広がります。ちょうどトンネルのカーブがドームのようになって立体的に映し出されます。
地下43m。おそらく「最も深い(低い)場所で上映されるプラネタリウム」かもしれません。
だんだんと暮れゆく空からきらきらと輝く星空へ。この季節に見られる冬の大三角形から星座を探したり、宇宙旅行で太陽系のほかの惑星を探検したりと、素晴らしい映像とナレーションで、会場は感動で満たされました。
地球は水の惑星と呼ばれています。私たちは水がないと生きていけないけれど、自然災害で水に襲われるという歴史も繰り返してきました。水と上手に付き合っていくことが大切なのだと、この調節池で教えられました。
この調節池に水が入ったのは約30年間で47回。取水している時はこの空間が水で満たされることを想像すると、それだけ豪雨が東京を襲っているのだということも実感しました。
このツアーは、多くの方に調節池に関心を持ってもらうために、施設見学会とほかのコンテンツを組み合わせて、さまざまな内容で開催されています。
それでも主役はこの施設そのもの。気象は人間の力ではどうにもならないことが多いけれど、水害に関してはある程度予想することができるといわれています。年々増える集中豪雨に対して水害が起こらない仕組みを作る、自然と都市が共存する知恵の最前線を見たような気がしました。
