大学研究者が事業を提案する仕組み=大学提案!過年度採択者に事業の進捗を伺いました。(R7 #3)
こんにちは!
「大学研究者の知と想いを、都政に反映!」大学提案担当です。
今回は平成30年度採択事業である「インフラ運営の透明化に向けたICT・AIを活用した市民協働システム」の進捗状況について、事業提案者よりご紹介いただきます。
ご登場いただくのは、東京大学の関本 義秀(せきもと よしひで)教授です。
目次
提案した事業内容について
近年、人口減少や少子高齢化、インフラ老朽化、大規模災害等、様々な課題がのしかかってくる中で、都市インフラの運営に対するイノベーション、特にICT、AIを活用したもののニーズは増えています。
しかし、ただただ、ICTを使って効率化するというよりは、市民にも当事者意識を持って前向きに関わってもらう市民協働の視点も組み込みながらデザインしていく事が大変重要と考えていました。
特に、東京都は1千万人以上の都民を抱え、全歳出の約17%、年間8,800億円規模の土木・都市整備系予算でインフラを運営し、「都民の声」が全体で年間約20万件ある中で、都市基盤・街づくりに約4,800件、「道の相談室」からは年間約1,300件来るような超巨大自治体でありつつも、組織が大きいがゆえに現場管理が硬直的で、都民に対して双方向的コミュニケーションがうまくできていない恐れもあるため、最大限透明性を高めつつ、イノベーションを生み出せるようなさらなる国際競争力を持つ必要があると考えていました。
実際に平成29年12月に公表された東京都の「東京都ICT戦略」や建設局の「見える化報告書」の中でも、ちばレポやFix My Streetなどの市民協働の取組の必要性が述べられていました。
一方、我々は、千葉市とその他いくつかの地方自治体と連携して、ちばレポの全国汎用版としてのMy City Report(https://mycityreport.jp以下、MCR)などの取組を行ってきていました。MCRは、道路等インフラの不具合を発見した際に、市民がスマホを用いて通報できるアプリ(MCR for Citizen)と、道路管理者そのものが通常のパトロールでダッシュボードにスマホを置いて走るだけで、深層学習により10種類のラベル付きの道路損傷画像を収集し、サーバーに送信する事ができるアプリ(MCR for Road Manager)をリリースしており、市民の知と管理者の知の融合を図ったものです。
特に、後者の道路損傷検出アプリは千葉市を始めとした10程度の自治体とともに実証実験を2016年~2018年まで行っており、市民協働ツールやAI×自治体による行政の効率化事例の先駆けとして、多くの報道・受賞をされるとともに、地方議会などからも問合せが多くありました。
しかしそれに留まらず、この道路損傷画像の教師データについては、大量に整備された事例は世界的にもなかったため、世界に先駆けて、2018年1月に9,053枚を公開しました(URL: https://github.com/sekilab/RoadDamageDetector)(Maeda et. al (2018))。それを用いて検出のためのアルゴリズムを競うIEEE BigDataConference2018内で”Road Damage Detection and Classification Challenge”を企画運営した所、応募期間の1カ月の間に15カ国52研究グループから応募があり、グローバルなニーズがある事を改めて示していました。
しかし、当時は採用自治体も10程度で、東京都全体が都下の市区町村と連携して、これらを全面的かつ総合的に取り組むことによる、都市インフラ運営に関わる国内外の政府・自治体、業界に対するインパクトは大変大きく、また全面的に行う場合にはスケーリングするために、技術的に必要となる開発要素はまだまだ多いと考え、事業提案に至りました。
事業の進捗状況と成果
都と協働事業で実施した3年間
1年目である令和元年は「東京都・インフラ運営の透明化に向けたICT・AI を活用した市民協働システム研究会」を立ち上げ、有識者や東京都やいくつかの都下の自治体に委員として加わって頂き、普及のための方策を議論するとともに、品川区、葛飾区、西東京市・武蔵野市等の区域で、都道や区道での試行を開始しました。
また、2年目は都道では全工区にてMCRの試行を展開し、さらに、3年目では、区道との連携等の実証を進めました。これらと並行して、技術開発も行われ、スマートフォンからの道路損傷検出の精度向上やダッシュボードシステムの改良なども行われました。
その結果、3年間の取組でMCR for Citizenは1751件の投稿があり、MCR for Road Managerも多くの道路損傷画像が蓄積され、補修の優先度分析等に活用され、翌年の令和4年度からは都道での全域展開に至るとともに、いくつかの都下の自治体でも本格運用となりました。
その後の展開
その後は東京都庁の中では、道路だけではなく、河川や公園緑地、港湾等、幅広いインフラの管理にも横転滝に適用されるとともに、MCRコンソーシアムに加盟の東京都以外の自治体も増え、コミュニティの活性化にも大変寄与しました。
今後の展望
現在は都下の基礎自治体においては、MCRを利用している所とそうでない所があるため、都道以外の基礎自治体の道路について、市民が都下の任意の道路で気づいた事を投稿する事が難しい状況です。
今後は東京都下のどの基礎自治体についても気にせず投稿でき、フィードバックを受けられるような相互連携機能が重要なため、そのような取組が進むことを期待しています。
―これまでの取組内容や事業の成果など、ご紹介いただきありがとうございました。関本 教授の今後のご活躍をお祈りしています!