デフリンピックを支え、ふたつの世界をつなぐ「手話通訳士」の魅力
11月に開催される「東京2025デフリンピック」(きこえない・きこえにくい人の国際スポーツ大会)では、手話通訳士の存在が欠かせません。そこで、手話通訳士にスポットを当てたトークセッション「ふたつの世界をつなぐ存在~手話通訳士の魅力~」が、9月28日(日曜日)に、調布市総合体育館で開催されました。
当日は、ろう者でありデフリンピック応援アンバサダーである川俣郁美さんがファシリテーターを務め、手話通訳士の江原こう平さん、佐藤晴香さん、橋本一郎さんの3名がパネリストとして参加。手話通訳士の役割や社会的意義、そしてデフリンピックへの思いについて語り合いました。今回の試みとして、登壇者4名はすべて手話言語で話し、日本語音声の通訳と字幕モニターでの表示という方法で進められました。
佐藤晴香さん
日本デフ水泳協会の手話通訳者としてチームの合宿や大会に同行している佐藤さんが、
「英語と日本語のように、音声言語と手話言語、言語の違う人がコミュニケーションをとるのに必要なのが通訳です。きこえない・きこえにくい人ときこえる人では、情報のとらえ方が違います」と話すと、
江原こう平さん
「そう、違う言葉をつなぐ、人と人をつなぐのが手話通訳者の役割です。その人が発する意図や背景を読み取りながら通訳することが必要です」と、手話通訳歴30年、手話通訳者育成のほか、テレビ通訳や国の会見などの通訳も手がける江原さん。
橋本一郎さん
ろう学校や特別支援学校で教員を長年務め、手話アーティストとしても活躍する橋本さんは、
「近年は手話通訳がつくイベントなどが増えましたが、僕は手話通訳を福祉の一環であるとか、黒いスーツの人などというイメージを取り払いたい。手話通訳士が、憧れの職業になるといいなと思います」と語りました。
川俣郁美さん
手話通訳を利用する立場として、川俣さんは、
「私は手話通訳の方に励まされることも多いです。きこえる人が、私への質問にも関わらず手話通訳の方に話しかけたとき、手話通訳の方が私の方を向いて投げかけてくれて、話の輪に入れてくれると、プロだなあと嬉しく思います」と話しました。
デフリンピックに向けて、それぞれの期待やみなさんへのメッセージを伺うと、
江原さんは、
「まず、デフアスリートたちが障壁なく競技できる環境を作りたいと思います。それをきっかけに、障壁のない社会を作りたい。そのためには手話通訳者になりたいという人も増やしたいと考えています」
佐藤さんは、
「ぜひ会場に来てください。選手が手話でコミュニケーションをとっている場や、手話で応援している・会話している場にいることはレアな体験だと思います。私は期間中、水泳チームに帯同していますが、私自身もとても楽しみしています」
橋本さんは、
「僕は教え子や友人がたくさん出場するので、応援に行きます。通訳の仕事はしません! 毎日SNSで発信して、応援する仲間を増やすのが僕の役割です。こどもたちが選手の姿を見て憧れる、希望をもって生きられる社会に期待しています」
と、語りました。
それを受けて、川俣さんは、
「選手のみなさんが熱戦を繰り広げる裏には、それを支える手話通訳の方がいます。手話の世界は魅力がいっぱい。これからもっと活躍の場が増えることを願っています」と会場にメッセージを送りました。
東京2025デフリンピックは、11月15日(土曜日)から26日(水曜日)まで、東京で初めて開催されます。事前の申し込みは必要なく(開閉会式、一部の競技を除く)、どなたでも無料で観戦できるので、ぜひ現地に行って選手を応援しながら、手話通訳の方々の活躍にも注目してみてください。