【井の頭自然文化園】ルリカケスのための環境づくり

2024年4月9日、井の頭自然文化園にルリカケスが1羽来園しました。ルリカケスは奄美群島にのみ生息し、国の天然記念物に指定されています。都立動物園では、ルリカケスの保護・繁殖に取り組んでいます。

　井の頭に来園した個体は上野動物園で繁殖したメスで、ルリカケスという存在を広く来園者の方々に知ってもらうことを目的に受け入れました。当園での飼育は初めてのため、ルリカケスが来園する前にたくさんの準備をしてきました。
 
4月に来園したルリカケス
　まずは環境づくりです。飼育経験豊富な職員からさまざまなアドバイスをもらい、部屋の大きさ、止まれる木の数、床の素材など、それらをひとつずつルリカケスに適した環境に近づけるようにしました。

　ルリカケスは、ほかの鳥類に比べて「アスペルギルス症」というカビを原因とする感染症にかかりやすいといわれています。しかし、飼育予定場所は日陰で多湿なため、カビが生えやすい環境にありました。そのため、部屋の地面に生えていた草はすべて取り除き、敷材は速乾性のある砂と川砂を混ぜたものに変更して、カビが発生しにくいようにしました。おかげで雨により地面が濡れても、これまでより早く地面が乾くようになりました。
 
ルリカケスの展示場のレイアウト
　次にえさの準備です。ルリカケスは雑食性で、野生では果実やドングリ、小型の爬虫類、ときには農地のサツマイモまで幅広く食べます。飼育下でもできるだけ野生に合わせたえさを与えたいため、バナナやパパイヤなどの果実類や、煮たサツマイモ、コオロギ、ヒマワリの種、果実食の動物用ペレット（人工的に作られたえさ）などを混ぜて与えています。ドングリは、実がたくさん落ちる秋から冬の時期に限定して与えています。

　当園のルリカケスはドングリがとくに好きらしく、今年の秋に初めて与えた際には、ふだんのえさはそっちのけで、すぐにドングリを口へ入れて運び、地面に隠しました。これは、「貯食」という行動で、寒い冬を乗り切るために種子などを隠しておく行動です。春に来園してから、秋に初めて貯食行動をしはじめ、地面に隠したものを取り出して大事そうに食べています。
 
地面にドングリを貯食している
　来年4月にはルリカケスがやってきて1年が経ちます。貯食行動のほかにも、カラスの鳴きまねや独りごとのように小さい声で鳴くなど、環境にもずいぶん慣れてきていろんな仕草を見せてくれるようになりました。来園された際には、どんな行動をしているか、ぜひじっくり観察してみてください。
 
最近のルリカケス
〔井の頭自然文化園飼育展示係　寺原〕

◎関連記事
・限りない挑戦［5］ルリカケスの里帰り（2021年02月06日）