「正しくありたい」との思いがSDGsに直結(大和財託株式会社)
大和財託株式会社 代表取締役CEO 藤原 正明 様
創業以来、成長の一途をたどる総合不動産会社
大和財託株式会社(以下、大和財託)は、不動産や建築領域等を活用し、お客様や取引先と多種多様な資産価値を共創しながら、一人でも多くの人々の人生を潤し続けることを目指す「資産価値共創業」を展開しています。不動産投資、土地活用、賃貸管理、ホテル事業など多様なサービスを提供しており、2013年の創業以来、関西、関東、中部、九州エリアを中心に事業を拡大し続け、2024年には売上高220億円を超える急成長を遂げています。同社の特長の一つは、不動産業でありながら木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、建設業としてあらゆる建築機能を自社で手がけることができる点です。低コストで物件を建築してお客様へ提供できるため、他社に比べて価格競争力が高い上、修繕を含めた管理運営や資産運用のコンサルティングまで一貫して担うことができます。
創業者であり、不動産投資や土地活用に関する書籍も多数発行する藤原正明社長は、事業の土台となる志について次のように語ります。
「当社は、『資産価値共創業』という独自の事業形態を掲げています。これは、顧客や取引先、社員と社会に対し資産価値のあるものを共に創っていき、一人でも多くの方々の人生を潤し続けるという意思を表したものです。業績は伸びていますがまだまだ成長過程ですから、もっと大きくなれるよう、今でも必死にもがいているところです」
リノベーションや新築にも欠かせない環境への配慮
大和財託では、中古の1棟アパートやマンションをリノベーションして投資物件として再生させるサービスも提供しています。2025年4月現在までに、中古1棟アパートを220棟(平均入居率は99%超)、中古分譲マンションを200戸手がけています。リノベーションは、既存の建物を同規模の新築に建て替えた場合と比較し、CO2排出量を最大76%、廃棄物量を最大96%削減できるとの研究結果もあり(※1)、非常にサステナブルな事業といえます。
また、近年は「建築物省エネ法」により、建築物には省エネ対策を講じることが義務化されつつあります。こうした社会情勢を踏まえ、大和財託は2024年度以降の開発案件では多くの物件に太陽光パネルを設置しています。実際、2024年度は49棟の建物に太陽光パネルを設置し、2025年度は約280棟に設置する見込みとなっています。その他、断熱性や気密性を高めたり、一次エネルギー消費量を抑えたりする省エネ設備の付帯や、外壁塗装の工夫、再生材の使用など新たな商品開発を進めています。 藤原社長は、こうした環境面に配慮した取り組みについて次のように語ります。
「サステナブルな建築物を提供することは、顧客にとって長期的に価値を保つことにつながります。また、太陽光パネルの設置は売電による収益アップにつながるという魅力もあります。今の時代は、サステナビリティやSDGsに沿ったサービスを提供できなければ投資家を呼び込めません。今後、当社ではさまざまな開発予定が控えていますので、こうした環境面への配慮を徹底していきたいと考えています」
※1 リノべる株式会社、金沢工業大学、国士舘大学の産学共同研究による
環境に配慮したリノベーション
「ワークアズライフ」の考え方で人生を充実させる
働き方改革の施行でワークライフバランスという言葉が一般的になり、全ての人が人間らしくやりがいを感じられる仕事ができるようにすることは、SDGsにおいても目標の一つとなっています。こうした中、藤原社長は「WORK AS LIFE(ワークアズライフ)」という新しい考え方を、創業以来、企業文化として積み上げてきました。
「ワークライフバランスは、『仕事と生活の調和』を意味しているわけですが、世間では、『仕事と私生活をはっきりと分けた上で、仕事はほどほどにし、私生活を充実させよう』という捉え方をしている人が多いと思うのです。しかし、これを少し拡大解釈すると、『仕事は面倒くさいもので、プライベートだけが楽しいもの』とも受け取れます。果たしてそれは幸せな人生といえるのでしょうか。ほとんどの人が、寝ている時間を除くと残りの時間の半分以上は仕事をしています。その時間を、生活費を稼ぐためだけに仕方なく仕事をして過ごしているとしたら、とてももったいないと思うのです。私が推奨するワークアズライフは、仕事と私生活を分けて考えるのではなく、『寝ている時間以外は、全て仕事であり、趣味であり、人生である』という考え方です。経営者はもともとこのような考え方で生きているのですが、ビジネスパーソンもこの考え方を取り入れても良いのではないでしょうか。
もちろん当社では、サービス残業は一切ありませんし、育児休暇や介護休暇などの休暇制度もきちんと整備するなど、労務管理は厳格に行っています。こうして勤務時間は守りながらも、勤務時間以外も仕事と生活をはっきり分けるのではなく『人生を豊かにする』という意識で趣味を楽しんだり、仕事に関わる資格の勉強をしたり、読書をしたりと、全てを自分の人生の一部と捉えて楽しむのです。その方が、人生は充実するのではないかと考えています」
透明性のある評価制度で働きがいのある組織に
また、藤原社長は、社員の努力や成果を的確に評価する「正しく風通しの良い組織作り」にも注力しています。その一環として、評価制度に「ミッショングレード制度(役割等級制度)」を導入。さまざまな職種ごとに異なる等級を設け、その等級ごとに期待された役割を果たせたかどうかを査定しています。賞与は評価によって異なりますが、月給は等級ごとに決まっており、社員は名簿で全社員の等級を見ることができます。賞与についても、SS、S、A、B、Cと指標を決めているため、ランクごとに賞与額がいくらになるのかを見える化しています。
年2回実施する査定も非常にきめ細やかです。まず、一次評価は直属の上司が目標の達成度合いに応じて評価し、二次評価は、評価される社員と関係する他部署の上司3~4人に、一次評価について意見を求めます。そして最終評価では、出そろった評価を等級ごとに並べ、達成した目標の難易度の高低を精査し、相対評価をします。こうして微修正をかけながら評価をすることで、部署や上司による不利が生じないようにしています。
この評価制度について、藤原社長は次のように語ります。
「透明性のある評価を行うことで、ブラックボックスで賞与額が決まるような、理不尽な思いをする社員が出ないようにしています。また、基本的にはハイパフォーマーにスポットライトを当てることをベースにしています。ハイパフォーマーが活躍でき、評価に対して不満が出ない制度設計です。組織で良くない例としてありがちなのは、ハイパフォーマーとローパフォーマーで賞与額に差がないことです。これではハイパフォーマーが不満を持ち、会社を辞めてしまいます。もちろん、ローパフォーマーも成果を出せるようサポートはしますが、評価に関しては結果を大事にしています」
昼寝制度や無料のカフェテリアなど、社員のパフォーマンスを上げる環境に配慮
藤原社長は、社員にとって働きやすい環境を整える工夫として、さまざまな制度や設備を積極的に導入しています。
その一つが「昼寝制度」です。オフィスに人工芝の昼寝スペースと、大きなビーズソファを複数用意し、いつでも誰でも昼寝ができるようにしています。時間は昼に限らず、疲れを感じたらいつでも仮眠を取ることができ、休憩時間として申請する必要もありません。
「当社を起業する以前に会社員として勤務していたころ、昼寝ができないことで午後のパフォーマンスがとても落ちていた経験があるのです。そこで、起業してからは昼寝をしており、社員にも勧めようと思い、昼寝スペースを作りました」と、藤原社長は笑顔を見せます。
また、社内にカフェテリアを設け、コーヒーと炭酸水を無料で飲めるようにしています。コーヒーは、1杯ごと豆から挽く本格的なもので、社員には大変好評とのことです。
さらに、高性能の筋トレマシンの完備や、レジャーやショッピングがお得に利用できる人気の福利厚生サービスの導入などもしています。 藤原社長は「『大和財託に入社して良かった』と、少しでも思ってもらえるよう、できることはいろいろとしていきたいと思っています。とにかく、社員がストレスなく良いパフォーマンスを発揮できる組織作りを意識しています」と力を込めます。
社内に設けられた昼寝スペース
思い描く「企業のあるべき姿」がSDGsの内容とリンク
大和財託では、一般財団法人日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)が主催する「ホワイト企業認定」において、2022年・2023年に「ゴールド」認定を取得、2024年には最高ランクの「プラチナ」認定を取得しました。これは「健康経営」「人材育成/働きがい」「ダイバーシティ&インクルージョン」など7つの指標から企業を評価・表彰する民間の制度です。藤原社長は、本認定の取得について次のように語ります。
「どんな仕事でも、お客様に喜んでいただくのは大変なことで、頭にも体にも汗をかかなければいけません。ですから当社の仕事は楽ではありませんが、その分、高い報酬が得られ、賃金も毎期上がっていき、労務管理もきちんとしています。本認定はそうした部分を第三者に客観的に評価してもらえる制度ですので、特に採用面では有効です」
こうした働きやすい環境の整備や環境に配慮した事業活動を展開する同社ですが、藤原社長は「SDGsありきで取り組みをしてきた感覚はありません」と語ります。
「私には、企業活動をするからには『正しくありたい』との思いが根本にありますので、創業時から環境に配慮するのは当然のことで、子どもや孫世代にまで承継できる正当な会社と、いい社会を残すことは企業のあるべき姿だと思っているのです。その『あるべき姿』をSDGsに照らしたところ、いろいろな項目が当てはまっていたという感覚です」
最後に、これからSDGs経営に取り組む企業に向けてメッセージをいただきました。
「SDGsには17の目標が掲げられていますが、私としては、社会が20年、50年、100年と続いていくためには当然のことが記されていると感じています。会社経営も、自分の子どもや孫世代を見据えた長期的な視点に立てば、必然的にSDGsの目標に当てはまる取り組みになっていくと思います。そのような考え方のもとで始めれば、リアリティーを持ってSDGsを捉えることができるのではないかと思います」
ホワイト企業認定証
会社概要
社名:大和財託株式会社
所在地:東京都渋谷区渋谷二丁目17番1号 渋谷アクシュ22階
創業:2013年
事業内容: 不動産・建築領域等を活用した資産価値共創事業
代表取締役CEO:藤原 正明
従業員数(グループ会社含む):307名(2025年4月1日現在)
ホームページ: https://yamatozaitaku.com/