シビック・クリエイティブが東京の未来を創造する #CCBTレポ
2022年10月にオープンしたシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]について、シリーズでお届けしています。前回は、担当者インタビューをご紹介しました。
今回は、CCBT関係者と、CCBT共創戦略アドバイザーを務める齋藤精⼀氏が、CCBTの2年半にわたる活動を振り返り、東京のクリエイティブの未来について語ったクロストークイベントの模様をお伝えします。
CCBT×TCSクロストーク「シビック・クリエイティブが東京の未来を創造する」
2024年3月18日、Tokyo Creative Salon(TCS)のトークイベントとして、東急プラザハラカド4階で、CCBT共創戦略アドバイザーも務める齋藤精⼀さん(パノラマティクス主宰/TCS2025 統括クリエイティブディレクター)、CCBTのアーティスト・フェローでメディアアーティストのゴッドスコーピオンさん、CCBTテクニカルディレクターの伊藤隆之さん、東京都生活文化スポーツ局の山本さんがこれからのCCBTと東京のクリエイティブについてディスカッションしました。

CCBTのネーミングについて「シビック・クリエイティブ」とは?
【齋藤さん】

CCBTの立ち上げから関わっていて、ネーミングの提案もしていました。
「TOKYO CREATIVE REPORT」によると、最もクリエイティブな都市は?という質問で東京は2位という結果が出ています。一方で、自分のことをクリエイティブだと思うかについて、他都市は70~80%の市民がクリエイティブだと思うと答えているのに対して東京は22%しかいない。日本は社会インフラがしっかりしているから消費者であればよく、自らが生産しなくてもいい環境があります。
シビック・クリエイティブが必要と感じたのはコロナ禍のとき。マスクが足りないからガーゼでマスクを作ったりとか、クリアファイルで防護服を作ったりとか。無いなら作るしかない。不織布を作る会社があってそれを熱処理する会社もあるのに、なぜマスクが作れないかと言うと産業構造が縦割りだからだと思っています。
アーティストとデベロッパーの間をつなぐ「シビック・クリエイティブ」
【齋藤さん】
都市の「安全安心」はデベロッパーや行政がつくらないといけない。一方でデザイナーやアーティストのように、もっと美しくすればこうなるという、数値化できない活動をしている人たちがいて、その真ん中をつないでいくことがシビック・クリエイティブということではないかと。CCBT立ち上げにあたって、宮坂副知事の壁打ち相手になって議論を重ねた結果、シビック・クリエイティブを要素として入れた方が良いという話から、シビック・クリエイティブ・ベース・東京になりました。
CCBTでは、この3月にレポートを作成しました。CCBTのような文化的な活動は、どれくらいの効果が上がったかなど、直接的になかなか結果が見えにくいが、東京都民の生活が豊かになるのは明らか。その部分を可視化していくため、このレポートが必要なのではないかと思います。
CCBTのビジョンとミッション
【山本さん】
2022年10月にオープンして2年半経ちましたので、これまでの活動を振り返ってこれからを考えようとCCBTのレポートを作成いたしました。

CCBTはアートとデジタルテクノロジーを通じて、人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点です。施設ではなく活動拠点と呼んでいるのは、創作スペースやスタジオを備えたラボ機能を持つプロジェクトだからです。
ビジョンは「東京に社会実験を引き起こす」。完成したものを見せるのではなく過程を見せることで 変革のエンジンとなっていくことを目指しています。ミッションは「発見」「共創」「開発」「連携」。市民一人ひとりにあるシビック・クリエイティブを社会へのアクションにつなげていくことを目指しております。
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]レポート
これまでの活動を振り返るとともに、これからを考えるために「シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]レポート」を作成しました。冊子はこちらからダウンロードできます!ぜひダウンロードしてご覧ください。
CCBTの活動実績と今後の目標
【山本さん】
CCBTの実績を紹介させていただきますと、約2年半の間に、イベント数288、プレイヤー数は322名、イベントの参加者数は3万7千人以上で、参加者の満足度は約93%という結果です。
今回のレポート作成にあたり、中長期の目標を整理しました。2025年は共創システムの設計・構築を目指しています。2030年にはシビック・クリエイティブの浸透と、関わる市民・団体、実施するプログラムの多様性が拡大することを目指しています。この活動が東京全体に浸透して、シビック・クリエイティブによるより良い都市(まち)・東京の実現が最終的な目標になります。
都内在住及び在勤・在学の市民1,100人を対象とした調査も行いました。その結果、CCBTの認知度は4.4%とまだ低いですが、アートやクリエイティブに興味・関心がある人は50%を超えています。さらに、シビック・クリエイティブの考え方に共感してくださった人は、特に10代、20代で高く、CCBTのプログラムに参加したいという人も50%を超えています。このように、調査の結果、CCBTの活動を広げていく可能性は大きいということがわかりました。
中長期目標の実現に向けて今後も活動を推進していきます。
アーティストのCCBTとの関わり
【ゴッドスコーピオンさん】
CCBTでは毎年5組のアーティストをフェローとしてサポートしていますが、わたしは2022年度に採択していただきました。採択されたプロジェクトを簡単に説明させていただきます。

Augmented Situation D(オーギュメンテッド シチュエーション ディー)というプロジェクトで、渋谷の街を舞台に、建築家、ファッションデザイナー、アニメーター、デザイナーといった多種多様な9名の作家さんに参加いただいて、渋谷の街のなかで自分がどんな景色を見たのか、どういう作品がその場所のなかに展開されるとよいのか、リサーチから始めて、バーチャル空間に作品を展開しました。作品が立ち上がっていく中で見えてきたことなのですが、作家が都市をどう見たのかを鑑賞者が追体験することが凄く面白かったと思っています。
このプロジェクトは、その後国交省のPLATEAUの事業で広島、金沢、大阪と日本各地の都市へと展開されました。
CCBTのオペレーション
【伊藤さん】

2023年から2024年春にかけて、VisVib(ヴィズ・ヴィブ)というシステムを作りました。聴覚障害をもった子どもたちのための音楽のワークショップを作りたい、そのためのガジェットを作ってくれないかという話があって取り組んだものです。CCBTと東京藝術大学芸術情報センター(AMC)と東京文化会館で連携して作りました。
最初は、聴覚障害をもった人たちの音楽ガジェットを全く想像できなくて、リサーチを何度も繰り返しました。
筑波技術大学には聴覚障害者だけが在籍する学部があるので、2回ぐらい授業の枠をいただいて皆さんの音楽体験は何ですか?という話を聞きに行ったりしました。
聴覚障害の方もプロジェクトメンバーとして参加して、何が面白いかを探りあう期間が3、4か月あって、最終的に音叉に似ているトーンチャイムという楽器を使って、それにあわせて照明が光る、映像が変化するというシステムを開発しました。
出来上がったものはエンジニアやデザイナーが成果物を保存・公開できるWEBサービスGitHubで作り方もすべて公開しています。技術解説映像も制作しましたが、ここまでしっかり手話を入れたものはあまり見たことがありません。手話の撮影では、手話通訳者もテクノロジーに関する単語がわからないし、そもそも手話になっていない単語も多いので、カタカナのまま翻訳していただいている部分もたくさんあります。
インクルーシブに作るプロセス
【伊藤さん】
このプロジェクトは、インクルーシブなデザインをするという事だけではなくて、インクルーシブに作るプロセスがとても意義深いのだと思います。一緒になって作るというか、できることできないことがみんな違うので、聴覚障害の方ができることがあるし、それは僕にはできないことなので、それを合わせて作る感じは面白いなと。そのとき関わってくれた多田伊吹さんという方が、その方も聴覚障害の方ですけど、詳細なレポートをCCBTのウェブサイトにあげてくれていて、そこに全プロセスが書かれていますので、ご興味があればぜひ見てください。
クロストーク:アーティストと社会の関係性

【齋藤さん】
近年、アーティストと社会の距離が変わってきている気がしています。今までは社会と関わる活動をやっているアーティストはあまりいなかった。
CCBTのプロジェクトではゴッドスコーピオンさんも渋谷の街を舞台に展示をしていますが、アーティストと社会の関係性が変化していると思うことはありますか。
【ゴッドスコーピオンさん】
ミュージアムという様式自体のジェネレーションが、大きく変わってきていると思います。
第一世代では、宮殿のプライベートコレクションみたいな形から美術館が始まって、ホワイトキューブになり、建築としての美術館になって、現在はデジタルイマーシブ型みたいなことも言われていますけど、周辺環境も取り込むような共生型なんじゃないかと。その場所から何かを取り込んで、場所自体の魅力をアーティストが媒介となって、共生するような形で何かを見せていくことが、街中で作品を展開するなかで思う事ですね。
【伊藤さん】
(アーティストと社会の距離は)ほんとに変わりましたよね。社会課題に対して意識のある人、もしくは層が増えてきたと思います。

登壇者の皆様にはCCBTでのこれまでの活動を振り返って熱く濃く語っていただき、大盛況のうちにトークイベントは幕を下ろしました。
『アーティストやデザイナーではなくても、自ら創り手となる。』
みなさんもぜひCCBTにお越しいただいて、あなたのクリエイティブを発見してみてください!
【アクセス】
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町3-1 渋谷東武ホテル地下2階
地図を見る
開館時間 13:00-19:00
休館日 月曜日(祝日の場合は開館、翌平日)、年末年始
※ その他、保守期間等の休館あり
【ご意見募集中】
都政の構造改革(#シン・トセイ)やnoteに関するご意見・ご感想をこちらのフォームから受け付けております。ぜひ、ご意見をお寄せください!