多摩動物公園 オオカミたちの近況
多摩動物公園ニュース
多摩動物公園では現在、オス4頭(ロイ、セロ、ネロ、ロキ)メス1頭(メロ)のタイリクオオカミがくらしています。大展示場には「ロイ」と「ロキ」、小展示場には「メロ」「セロ」「ネロ」(ネロとセロは日替わり)で出ています。茂みのなかなど見えづらい場所で休んでいることが多く、なかなか姿が見えないオオカミたちがどのようにすごしているか、最近の状況をお伝えします。
今年の夏は、全頭に食欲不振が見られました。いままでは暑くてもそのようなことはなかったので、今年の夏が特に暑かったか、オオカミたちの年齢の影響かもしれません。
「アジアの平原」へ引っ越してから9年が経過して展示場の木々が大きくなり、オオカミたちがすごす日陰が十分多くなりましたが、大展示場は室内の方が涼しいので、夏のあいだは室内への出入りを可能にし、居場所を選べるようにしました。
オオカミはいちばん暑い時間帯を室内ですごしていましたが、夕方、少し涼しくなると外ですごすようになりました。通常は、食べ物が食べたくて閉園前に室内へ帰ってくるのですが、食欲不振のため帰ってこず、担当者を悩ませました。特にロキは衰弱が著しかったため、スポットクーラーを当てて乗り切りました。気温が下がるにつれて全頭食欲が戻り、現在は室内への帰りも改善しました。
室内への帰りについて、最近、メロにちょっと変わった行動が見られます。夕方4時すぎになると展示場のガラスの前に出てきて観覧通路側を見ています。どうやら、担当者の行動を見ているらしく、お客さまが近くで見ていても変化はないのですが、担当者が近づくとサーっと逃げていきます。オオカミを間近で見られるのでお客さまには好評ではありますが、なかなか室内へ帰って来てくれないため、担当者はちょっと困っています。

前回オオカミたちのようすをお伝えしてから2年半が経過し、当然のことながら、年を重ね、5頭の父親「ロボ」の死亡時の年齢(13歳9ヵ月)を越えました。ロイとセロは母親「モロ」の死亡時の年齢(15歳3ヶ月)も越えました。
耳が衰えてきたのか、展示場で呼んだり物音を立てたりしても、反応が鈍くなっています。セロの左目は瞳孔が白くなり、以前より見えづらくなっているようです。肢の筋肉がやせ、転びやすくなり、機敏な動きが少なくなってきました。馬肉や鶏頭だけではなく、ビタミンやミネラルの補給のために内臓も食べてほしいのですが、歯の摩耗が進み、かみちぎることが困難になったため、現在はサプリメントを与えています。
老化による衰えではありませんが、ロキの見た目が徐々に父親のロボに似てきました。「歳をとると親に似てくる」と、人間でもよく言われます。オオカミでも同じことが起こるのだなとおもしろく思います。

これから寒くなり、日向で寝ていることが多くなるでしょう。加齢には抗えませんが、少しでも長生きできるよう、彼らがすごしやすい環境を提供していきたいと思っています。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 生駒〕