学びの枠を越え、未来をつくる-インダストリアルアート学科20周年から見る都立大-

東京都立大学
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デザインと工学を横断し、新しい価値創造を学ぶIA学科。
その20年をたどると、専門を深めながら異なる領域と出会い、自ら問いを立てて、
試行錯誤を重ねる、都立大の多様な学びが見えてくる。
藤原敬介教授、笠松慶子教授、4年次の橋本麻夏さん、3年次の藤木優弥さんの言葉から、IA学科の特色を通して、都立大が大切にしてきた学びのあり方を探る。

キービジュアル
藤原 敬介(ふじわら けいすけ)教授
藤原 敬介(ふじわら けいすけ)教授

システムデザイン学部 インダストリアルアート学科

笠松 慶子(かさまつ けいこ)教授
笠松 慶子(かさまつ けいこ)教授

システムデザイン学部 インダストリアルアート学科

「気づけば20周年でした」

20周年を迎えて、率直にどう感じていますか。

笠松先生
笠松先生
気づけば20周年だった、というのが正直な感覚です。インダストリアルアート学科(以下IA学科)は国内でも他にない学科だからこそ、これまでの成果や経験、卒業生の活躍を共有し、伝統として残していきたいと考えています。
そこで、つながる場を設けようと、20周年に合わせ、記念イベントを企画しました。これを機に、世代を越えたつながりが生まれ、学科の歩みを次の世代へ受け継いでいければと考えています。

分野を掛け合わせる学び

IA学科ならではの学びの特徴を教えてください。

藤原先生
藤原先生
着任時にもそう感じましたが、希少な学科だと思います。デザインと工学を掛け合わせて学ぶこの学科は、一つの専門だけを深く掘り下げるというより、さまざまな要素を積み重ねて形にする学びの特徴があるため、独自性が生まれやすいのです。

その「組み合わせ」を象徴する取り組みはありますか。

笠松先生
笠松先生
大学院の分野横断型プロジェクト演習授業として実施してきた「KADEN Project」が、その学びを象徴する取り組みです。デザイン系と工学系の学生が互いの得意分野を生かし、新しいアイデアの発想から、実際に動く試作まで協働して進めます。異なる専門の知識を持ち寄ることで、お互いの得意なところを生かし合えるプログラムでした。このプロジェクトから始まり、現在は多岐に渡るプロジェクトを実施しています。

「まず動いてみる」を教える

教育において、お二人がそれぞれ大切にしていることを教えてください。

藤原先生
藤原先生
学生には、まずやってみる、まず調べてみる、そのことを大切にしてもらっています。まず歩き出してみて、違ったら戻ってやり直せばいい。その繰り返しが、自分の答えへの自信につながるからです。
笠松先生
笠松先生
研究室では「三歩進んで二歩下がる」というコンセプトを掲げています。まず試し、考え、また少し戻って検証する。それでも一歩は進んでいる、という姿勢を大切にしています。

学生の傾向に変化は感じますか。

笠松先生
笠松先生
以前と比べて理系寄りの学生が増えたように感じます。裏付けとなるデータをもとにデザインしたいという学生が増えている印象です。
藤原先生
藤原先生
学生自身が変化したというより、学生が世の中の変化を敏感に受け取り、そこに関心を持ち続けている彼らの後ろ姿が変化しているように感じさせるのかもしれません。

受け継ぐものと、これから

卒業生はどのような分野で活躍していますか。

笠松先生
笠松先生
自動車、家電、IT業界をはじめ幅広い業界に進んでいます。一期生が40歳手前になり、企業に入った卒業生も中核を担うポジションになってきています。
藤原先生
藤原先生
今回の記念事業のロゴをデザインしてくれたのはグラフィックデザインを学んだ卒業生です。一方で、大学院時代の作品をもとに起業し、経営者として活躍している卒業生もいます。本学の卒業生に対し、これからもっと世の中の評価が高まってくるのではないかと感じています。

これからのIA学科に期待することを教えてください。

笠松先生
笠松先生
時代を先取りしつつ、これまで培ってきたものや、伝統も引き継いでほしいと思います。自由でありながら、必要なときには一つになれる学科であってほしいと思います。
藤原先生
藤原先生
手法が変わっても、デザインが人の暮らしや環境を優しく整えるという根底は変わりません。揺るぎないデザイン哲学を、学科として共有し続けたいと思います。
『インダストリアルアート創設20周年記念誌』編集長  舟山貴士(1期生)
『インダストリアルアート創設20周年記念誌』編集長 舟山貴士(1期生)
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藤木 優弥(ふじき ゆうや)さん
藤木 優弥(ふじき ゆうや)さん

システムデザイン学部 インダストリアルアート学科3年

橋本 麻夏(はしもと あさか)さん
橋本 麻夏(はしもと あさか)さん

システムデザイン学部 インダストリアルアート学科4年

幅広い学びから出発する

IA学科を選んだ理由を教えてください。

橋本さん
橋本さん
やりたいことが明確に決まっていない中、メディアとプロダクトを幅広く学び、さまざまな分野に触れながら自分の方向性を見つけたいと思い、興味を持ちました。
藤木さん
藤木さん
「ものをつくる」ことが好きで、高校3年生のときは理工学部の機械系を考えていました。ただ、使う人の姿が見えるような、最終的な成果物に直結する仕事に就きたいと思い、デザイン系を志望しました。

学科ではどんなことを学んでいますか。

藤木さん
藤木さん
プロダクトデザインコアは椅子や机など形のあるもの、メディアデザインコアは印刷物や映像、CGなどをつくる分野です。1〜3年次は両方に触れながら学び、3年次から専門性の高い授業が増え、4年次にはスタジオ(研究室)に所属します。少人数のスタジオで、ゼミを行っており、学生同士はもちろん、先生とも密なコミュニケーションを取りながら学んでいます。

学生の発想が、授業の外へ広がる

取り組んでいる活動についても教えてください。

橋本さん
橋本さん
学生同士が自由にアイデアを形にできる場をつくろうと、学生主体の制作プロジェクトを立ち上げました。異なる分野の学生との会話から刺激を得られるのがこの大学の面白さです。
藤木さん
藤木さん
同級生と学外展示のグループを結成し、作品制作から空間設計、宣伝まで自分たちで行いました。授業で培った経験や力を活かして、より多くの人に届けたいと思ったからです。

対話と試行錯誤を重ね、自分の問いを深める

将来はどんな進路を考えていますか。

橋本さん
橋本さん
空間デザイナーになりたいと思っています。人との交流や、人が楽しんでいる様子を見るのが好きなので、自分の好きなことを追求しながら形にできるデザイナーになりたいです。
藤木さん
藤木さん
機械や機構が好きなので、それを生かせるプロダクト系の仕事に就きたいです。おもちゃや文房具などのプロダクトデザイナーになれたら嬉しいです。

これから都立大を目指す高校生にメッセージをお願いします。

橋本さん
橋本さん
入学時にやりたいことが決まっていなくても大丈夫です。「なんとなく楽しそうだな」という気持ちでも、幅広く学ぶうちに、自分のやりたいことが見えてきます。
藤木さん
藤木さん
都立大には、個人では用意しにくい加工設備が充実しています。やりたいことへの想像を膨らませてきてほしいです。
20th Anniversary

「インダストリアルアート創設20周年記念祭─20年のあゆみ、そして未来へ」は2026年6月7─14日、日野キャンパスで開催された。2号館地階アトリウムでは20年の歩みを振り返る総24メートルの巨大年表を中心に卒業生、在学生有志による作品展を、同1階ギャラリーでは教員有志によるグループ展「Beyond Industrial」を開催。メインイベントデーの6月13日には2号館大講義室Bで創設時の退職教員(長田謙一、笠原信一、稲垣博、串山久美子、山下敏男)を招いたシンポジウム「創設の精神と創造の原点」と卒業生によるセッション、6号館ロビーで懇親会が催され300人が一堂に会した。また、記念刊行物として年表や寄稿エッセイ等を収録した『インダストリアルアート創設20周年記念誌』(B5変形判134ページ)が刊行された。

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ia20th記念展会場風景。中央は2005年創設準備から現在までの年表
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ia20thとサイン計画:井上悠(5期生)
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卒業生のメディアパフォーマンス・ステージ。菊川裕也、鈴木龍彦、金井隆晴(1期生)、吉池俊貴(2期生)による自作楽器演奏
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坂口渓+高橋健太郎(10期生)らの「利他庵」
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橋本麻夏(4年生)らの学生企画CREAM
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藤木優弥(3年生)らの学生企画favrica

20周年記念祭実行委員長からのメッセージ

日頃からものづくりやメディア創生を専門とする教員と卒業生が力を合わせてイベントをつくることは驚きと発見に満ちた経験となった。教員のアイディアから空き教室にカーペットを敷いてチャイルドルームにしたり、展示会場の片隅にソファと玩具を置いたりといった会場設計のおかげで、子育て中の卒業生も安心して来場できた。また、卒業生からは芝生広場で無料コーヒーの野点パフォーマンスが行われ、心地よい語らいの場が生まれた。こうしたアクセシビリティーやコミュニケーションなど形のない関係性のデザインは、まさにIA学科創設のテーマのひとつだった。こうした配慮や工夫が大学のイベントの中でごく自然に実現できたことは、20年前いち早くデザインによる価値創造を目指した学科を創設した本学の誇りにしてよいのではないか。

楠見 清 システムデザイン学部インダストリアルアート学科教授

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懇親会には卒業生ら関係者300人が集まった

総合HP教員紹介ページ/
システムデザイン学部 インダストリアルアート学科 藤原 敬介(ふじわら けいすけ)教授
システムデザイン学部 インダストリアルアート学科 笠松 慶子(かさまつ けいこ)教授
システムデザイン学部 インダストリアルアート学科教授 楠見 清(くすみ きよし)教授

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