脱プラスチック時代の新たなビジネス
FMラジオ放送局J-WAVE(81.3FM)のナビゲーターを務めるノイハウス萌菜氏。2018年に、外資系コンサルティング会社の日本支社で働くかたわら、ステンレス製ストローを販売する「のーぷら No Plastic Japan」を立ち上げるなど、環境ビジネスに携わってきた。
カフェなどで冷たい飲み物を注文するときは、プラスチックストローをもらわずに、ステンレス製のマイストローを利用するというノイハウス萌菜氏。東京都大田区のカフェルシェロにて。
プラスチックストローを廃止する動きが加速
海洋プラスチックごみは世界的な課題で、各国が使い捨てプラスチックの削減に向けて取り組んでいる。なかでもプラスチックストローは、ほかのプラスチック製品と比べると小さく軽いため、ごみ袋からすり抜けて雨や風によって海や川に運ばれるなど、自然環境へ流出しやすいといわれている。
アメリカでは、すでにウォルト・ディズニー・カンパニーやスターバックスなどの企業がプラスチックストローを廃止。EUでも2021年からストローを含む特定の使い捨てプラスチック製品の市場流通を禁止している。
日本では外食チェーン企業のすかいらーくホールディングスが2018年にとうもろこしを原料にしたバイオマスストローの導入を開始。プラスチックストローを廃止する企業が増えるなか、紙や竹、ステンレスなどを用いた代替ストローが注目を集めている。
SNSでステンレス製ストローを宣伝
J-WAVEのナビゲーターとして知られるノイハウス萌菜氏は、ステンレス製ストローの販売を行う「のーぷら No Plastic Japan」の代表も務めている。起業のきっかけは日本で暮らすようになって知った、日常生活で出るごみの量の多さだった。
「当時、外資系コンサルティング会社の日本支社で働いていました。昼にコンビニでお弁当を買う同僚が、食後にフィルム、容器、スプーン、フォーク、おしぼりの袋、レジ袋など、毎日大量のプラスチックごみを捨てていたんです」。長く暮らしていたイギリスでは見なかった光景だという。
J-WAVEの番組「STEP ONE」(月~木曜の9~13時)に2021年4月からレギュラー出演。番組では環境に配慮したビジネスなども取り上げる。現在は育休中で2023年夏頃に復帰予定。Photo: courtesy of Neuhauss Mona
ノイハウス氏は、「使い捨てを考えなおす」ことを呼びかけ、ごみを減らすゼロ・ウェイスト運動を広めるため、「のーぷら」としてインスタグラムでカフェにマイストローを持参する様子や使い捨てプラスチックを減らす取り組みなどを日本語と英語で発信。2018年に「のーぷら」でステンレス製ストローの製造・販売を開始した。すぐに反応があったのは一般消費者からで、消費者の関心が高まると、それを追うように導入を希望する都内のカフェやショップ、記念品として配布したいという企業から問い合わせがあった。
「ストローにした理由は、当時、東京でほとんどマイストローを持っている人を見かけなかったからです。マイカップやマイバッグはすでに持っている人が多くいたので、同じようなものを新たに製造しても物が増えるだけだと感じました」
東京で人気のビーガン料理専門店「ファラフェルブラザーズ」が、「のーぷら」のステンレス製ストローの導入1号店。Photo: courtesy of Falafel Brothers
今後、環境産業の市場規模がますます拡大
ノイハウス氏は量り売りショップ「nue by Totoya国分寺店」などを運営する斗々屋の広報をはじめ、企業との連携プロジェクトやコンサルティングなども行っている。2020年にプラスチック製買い物袋が有料化してから、企業の脱プラスチックへの取り組みも加速。企業からの問い合わせも増えているという。
2021年11月、SDGsに関する国内外のニュースを発信する、サステナブル・ブランド ジャパンの法人会員向けのイベント「第3回SB-Japanフォーラム」に登壇。Photo: courtesy of Neuhauss Mona
2020年の国内の環境産業の市場規模は、2000年と比べて約1.8倍の104.4兆円に成長し、2050年には約124.4兆円まで成長すると推計された(出典:環境産業市場規模検討会「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」)。使い捨てプラスチックに限らず、環境問題やSDGsへの取り組みが新たなビジネスチャンスとなるかもしれない。
休みの日には子どもとカフェや公園に出かけるというノイハウス氏。写真は東京都大田区立せせらぎ公園に隣接するカフェルシェロにて。Photo: courtesy of Neuhauss Mona
ノイハウス萌菜(のいはうす・もな)
1992年生まれ。ドイツ人と日本人の両親をもつ。イギリスで育ち、2016年から東京での生活をスタート。外資系コンサルティング会社の日本支社勤めのかたわら2018年にのーぷら No Plastic Japanを設立。環境問題を自分ごととしてとらえ、それぞれが無理なく日常に取り入れられる環境保護活動やそれに繋がる行動を提案し発信している。
取材・文/今泉愛子
写真/田中秀典