大工への憧れから指物師へ
指物の歴史は平安時代の宮廷文化華やかなりし頃にまでさかのぼるといわれる。なかでも武家や町人など向けに、華美に走らず余計な装飾を排して木目の美しさを引き立て、すっきり堅牢であるのが「江戸指物」だ。文箱や硯箱といった小さなものから、箪笥や机などの大きな家具まで幅広く手がけられる。隠れた部分にこそ凝った細工を施す江戸っ子ならではの「粋」な美意識にこだわっているところが特徴である。
江戸指物の技法による硯箱。2本並んでいるのは筆で、先端がキャップになっているが、きつすぎず緩くもない絶妙な細工だ
戸田氏が修行を始めたのは18歳。小学6年生の頃、間近で見た大工の仕事に憧れ、中学を出て職業訓練校の木工科に入った。……
写真/藤島亮