眠れる人材を、ビジネスの新たな力へ【TOKYO UPDATES】

TOKYO UPDATES
  • LINE
  • Twitter
  • Facebook
  • note
  • note

「インクルージョン」の事業価値

 VALT JAPAN株式会社代表取締役CEOの小野貴也氏にとって、「働くこと」への問いは製薬業界に端を発する。2014年の起業以前、製薬会社に勤めていた小野氏は、薬が症状を安定させ健康をサポートすることで人々の生活の質は向上すると信じていた。ところが、ある患者会に足を運んだことで、その認識は揺さぶられることになる。

 精神面の課題や発達特性を抱える約30名が、それぞれの経験を語り合っていた。薬のおかげで症状をうまくコントロールできるようになったという声は多かったが、一つの悩みが全員に共通していた。安定して働ける場が見つからないのだ。「あれは衝撃でした」と小野氏は振り返る。「症状が良くなって健康状態が安定すれば、生活の質も自ずと上がるはずだと思っていたんです。でも、そんなに単純な話ではありませんでした」

 この経験がVALT JAPAN創業の原動力となった。掲げるビジョンは、「就労困難者が大活躍できる時代をつくる」こと。ここでいう「就労困難者」とは、障がい・疾患・健康上の問題、またはその他の事情から、働きたくても困難に直面している人々全般を指す。現在、企業の業務を全国の就労支援事業所と就労者へつなぐBPO(業務プロセスアウトソーシング)プラットフォーム「NEXT HERO」を運営するとともに、直営のデジタル就労支援センター「NEXT HERO DIC(デジタルイノベーションセンター)」も手掛けている。

 小野氏はこの問題を、社会的な課題であると同時に経済的な課題としても捉えている。リクルートワークス研究所によると、日本は2040年までに約1,100万人規模の人手不足に陥る可能性がある。一方、就労困難者は国内に推計1,500万人いると小野氏は語る。そうした人々をより多く労働市場へつなぎながら、企業にとっての価値をも生み出す仕組みをいかに構築するか。それが小野氏の問いである。

20260618092730-68d2e55a025320caae55d371bcf14ea3add34ece.png
NEXT HERO DICのモデルは、デジタル業務と企業ニーズ、そして就労困難者を結ぶ Image: courtesy of VALT JAPAN株式会社

分断された市場をつなぐ

 VALT JAPANのNEXT HERO BPO事業は、小野氏が目にしたあるギャップから生まれた。人手不足・業務のボトルネック・デジタル人材需要に直面する企業と、働く意欲がありながらも適切なビジネス機会になかなかたどり着けない人々の間のギャップだ。「事業所も企業もたくさん存在しますが、今まではうまくつながっていませんでした」と小野氏は言う。「そのギャップは、完全な空白でした」・・・・・・

 

 


▼東京の新たな魅力や気づきを、「TOKYO UPDATES」でチェック!

関連ワード
カテゴリ
タグ