夢が次々に生まれる街、東京

TOKYO UPDATES
  • LINE
  • Twitter
  • Facebook
  • note
  • note
01-lilico.jpg
LiLiCo氏にとって東京は、人と人とのつながりが、人間として、そして職業人としての成長を促す場所だという

 東京は、人々の野心だけでなく、日々の出会いによって形作られる街であり、出自の異なる人々が活躍できる場所だ。数十年にわたりこの街を拠点としてきたLiLiCo氏の人生は、人々が持つ「違い」を吸収して創造的なエネルギーに変える東京の力を体現している。

始まりの場所としての東京

 東京はLiLiCo氏にとって、長年にわたり「故郷」であるとともに、「実験場」でもあった。ストックホルムに生まれ、18歳で単身来日して以来、30年以上にわたって東京で暮らし、キャリアを築いてきた。現在は映画コメンテーター、俳優、ナレーター、声優として知られているが、東京との縁はキャリア上の成功よりもはるかに深い。そんなLiLiCo氏にとって東京は、好奇心、レジリエンス(回復力)、そして人とのつながりが報われる都市であり、自身と一緒に進化し続ける場所だ。

 LiLiCo氏が最初に移り住んだ場所は、多くの外国人観光客が東京と聞いて想像するような、きらびやかなネオン街ではなく、葛飾区の下町だった。そこにあったのは、華やかさではなく、人々の日常だ。「それが私にとっての東京でした。だから、有名な交差点や人混みの話をされても、ピンとこなかったのです。初めて渋谷に行ったときには衝撃を受けました。同じ都市の中に、いろいろな『東京』があることを知ったのです」

 そうした多面性の感覚は、LiLiCo氏の経験の軸となった。東京は1980年代末当時からすでに、可能性があふれる場所としての魅力を放っていた。街中には至る所に自動販売機や24時間営業のコンビニがあり、安全で暮らしやすい環境の中で「実験」がしやすい都市だった。「何かがうまくいかなかったとしても、それはこの街のせいではないと感じました。東京は選択肢を与えてくれます。ただ前進あるのみです」

02-lilico.jpg
LiLiCo氏は、東京が持つ多面性のおかげで、日常生活とクリエイティブな仕事の間を行き来し、現在のキャリアと考え方を培うことができた

苦境から得た学び

 LiLiCo氏は、この「前進」が戦略というよりは生き抜く術だった時期についても、包み隠さずに語る。芸能界での下積み期間は20年以上続いたが、うち5年は住居がなく、車で寝泊まりする生活だった。でも、そうした苦境を美化はしない。「東京での車中生活は理想的ではありません」と率直に語り、東京の生活費と人口密度の高さに言及した。それでも、この時期が自分の忍耐力を培い、学びにつながったと考えている。

 「一度どん底に落ちたら、怖くなくなります。東京は、失敗してもそれでおしまいではないことを教えてくれます。特に、人とのつながりを保っていれば、失敗は終わりに直結しません」。LiLiCo氏はこれまで、常に人間関係を大切にしてきた。チャンスというものは、良いタイミングがたまたま重なって訪れるものではなく、人との会話、信頼、そして全力を尽くす意志があってこそ訪れるものだと信じている。

創造性が報われる街

allgoodfriday-jwave.jpg
2016年から続くラジオ番組のパーソナリティーを務めているLiLiCo氏 (提供写真)

 LiLiCo氏は、複数のクリエイティブ分野で活躍し、エンターテイナーでもありプロデューサーでもあるマルチタレントだ。そうした柔軟な活動ができるのも、アイデアがメディア、産業、コミュニティの間を横断する東京の文化的エコシステムのおかげだと考えている。映画やテレビからファッション、工芸、パフォーマンスまで、東京はどんな規模の実験も可能な場となっている。

 「東京は自分の仲間を見つけられる街です。アニメ、ファッション、デザイン、音楽など、どんな興味を持っていようとも、同じ人々のコミュニティがあります」。東京の密度、多様性、インフラはアートの創出だけでなく、人々の協働を促し、アイデアを行動に移しやすくしている。

 そうした相互交流は、ファッションとデザインにも及んでいる。LiLiCo氏が取材時に身に着けていたアクセサリーの中には、東京で出会った職人やデザイナーとの長年の関係により実現したクリエイティブなコラボレーションから生まれたものもあった。同氏は、ファッションを別個の活動として扱うのではなく、素材やプロセス、人と人とのつながりに根ざしたストーリーテリングの一形態として捉えている。「東京はこうしたコラボレーションを可能にします。全く違う分野の人と出会い、信頼関係が築ければ、アイデアは自然と具現化していきます」

 こうしたオープンさは、東京に対する世界の認識にも影響している。LiLiCo氏は海外の俳優や映画製作者へのインタビューを通じて、訪問者が東京という街をどう捉えているかを実感してきた。海外勢の関心は、東京の効率性や治安の良さなどだけでなく、日常の人間的な面にも注がれているという。「彼らはリアルな東京を見たいのです。個室や高級レストランでの経験だけでなく、街中や電車など、人々が実際に生活をしている小さな場所について知りたがっています」

評価と責任

03-lilico.jpg
評価されるためには、何か大きなことをするのではなく、進化する東京のカルチャーシーンの中で創造し、貢献し続けることが重要だという

 LiLiCo氏は2024年、リーダーシップや支援活動などを通じてよりインクルーシブで持続可能な社会の構築に貢献した個人を表彰する「HAPPY WOMAN賞」を受賞した。自身はこの賞を、転換点としてではなく、これまでの歩みを確認するものとして捉えている。「自分が続けてきたことは間違っていなかったということがわかりました」。これを機に、国際支援活動にさらに深く関与するようになった。LiLiCo氏は現在、ネパールとウガンダでの学校建設や、女性と子どもの生活の質向上に向けたインフラ整備プロジェクトなどに取り組んでいる。

 そうした活動の背後にもまた、東京に根ざした視点がある。「東京は私に声を与えてくれました。だからその声を、責任を持って使っています」。LiLiCo氏にとって東京は、文化とメディア、持続可能性がどのように交差できるかの手本を示せる場所だ。影響力のある人物は自らの立場を思慮深い形で利用し、そうしたビジョンを発信する責任があると考えている。

世界へのメッセージ

 LiLiCo氏は、東京を訪れる予定だったり、東京での就職や夢の実現を目指したりしている海外の読者に向けたアドバイスとして、現地の言葉を学び、文化を尊重し、人々と交流してほしいと語る。「ここでは、距離を置いてしまっては生活を築けません。自ら参加することで、生活を築くのです」

 東京が世界に誇る魅力は、その経済力や創造性だけでなく、違いを吸収してエネルギーに変える力だとLiLiCo氏は考えている。東京への国際的な注目が高まり続ける中で、課題となりチャンスにもなるのは、オープンさや人間性、そして人々のつながりを保ち続ける都市であることだ。

 「東京は混沌としています」とLiLiCo氏は笑顔で語る。「でも、その混沌は創造的です。耳を傾け、会話し、努力する意志があれば、この街は必ずそれに報いてくれます」

LiLiCo

04-lilico.jpg

スウェーデン生まれのタレント、映画コメンテーター、俳優、ナレーター、声優。1989年に芸能活動を開始して以来、30年以上にわたり東京を拠点にさまざまなメディアで活躍すると同時に、東京のクリエイティブシーンと社会に深く関わる。2024年、持続可能な社会の構築に貢献したとして「HAPPY WOMAN賞」を受賞。

 

 

取材・文/リサ・ワリン
写真/藤島亮
翻訳/遠藤宗生

関連ワード
カテゴリ
タグ