【東京ベイeSGプロジェクト】未来のモビリティはどうなる?陸・海・空を舞台に自動化の実現へ
「空飛ぶクルマ」や「自動運転する船」など、次世代の乗り物が近い将来実現するかもしれません。今回、ベイエリアを舞台に「空飛ぶクルマ用浮体式ポートを核とした、陸海空のMaaS【注】実現」実証公開が行われました。これは、陸・海・空のモビリティがすべて自動運行で接続され、誰もが、いつでも、行きたい場所へ、自由に移動可能な社会の実現を目指した取り組みです。

実証会場のひとつとなった海の森公園東側の船着き場では、海上に浮かぶポートにヘリコプターを離着陸させる実証が行われました。ヘリコプターは空飛ぶクルマを想定して、同じくらいのサイズと重量の小型機を使用します。このような浮体式ポートで離着陸を行うのは、世界でも例が少ない試みとして注目されています。

浮体式ポートは、2メートル四方厚さ60センチメートルのパーツを縦横11個ずつつなげて敷きつめた、22メートル四方の海に浮かぶ離着陸場です。このパーツ素材は、浮き桟橋や水辺の土木工事でも使用されているもので、低コストかつ短期間でポートを設置できるのが特長です。

この日は快晴に近く穏やかな気候で、海面は小さな波が立つくらいの状況です。実際にポートの上に乗ってみました。少し揺れは感じますが、大勢の人が乗っても安定感があります。

関係者や報道陣が数多く見守る中、上空から飛んできたヘリコプターは、浮体式ポートの中心にピタリと着陸しました。しばらく海上のポートで停止していましたが、とても安定しているように見えます。やがてヘリコプターが飛び立つと、会場からはどこからともなく拍手がわきました。

将来的には空飛ぶクルマでこの浮体式ポートを採用する予定です。実現すれば、ベイエリアをはじめ、湖畔や河川、島しょ部などにも導入しやすくなり、物流や交通の大きな力となります。また、災害時などにも活躍できそうです。

海上交通として、スタートアップ企業が開発した、船に搭載する自律航行システムの性能実証も行われました。こちらは目的地を設定すると、水上の障害物やほかの船をリアルタイムで検知して、自動で回避しながら航行するシステムです。既存の小型船舶に後から搭載できるのが特長で、瀬戸内海ではすでに実用化されているものです。

東京湾は船の数が多く、巨大な橋の下を通るなど、瀬戸内海と条件が異なります。この実証で、日の出桟橋から海の森公園の桟橋まで、安全に自律航行できることを確認しました。
車の自動アシストを船に置きかえたイメージで、まずは船長が乗船しながらサポートすることからスタートし、将来的には航行の無人化を目指しています。

陸上では、スタートアップ企業が開発した、自律ロボットの運行システムも紹介されました。センサーを持たないロボット(写真右側)を外部から自動制御することで、自律運行できるというものです。1つのシステムで、人が乗るものや運搬用などさまざまな種類のロボットを同時に管理しながら自律運行させることが可能になります。
そのほか、空飛ぶクルマに搭乗することを想定して、旅客ターミナルの効率的なオペレーションの検証も行われました。
都では、ベイエリアを舞台に、50年・100年先までを見据えたまちづくりを構想する「東京ベイeSGプロジェクト」を推進しています。今回の実証はその一環で、ひと昔前まではSFの世界だと思われていたことが、実現する未来がすぐ近くに来ています。ぜひこれからも注目してみてください。
【注】MaaS(マース、Mobility as a Service)とは、移動に必要な複数の交通手段を一つのアプリやサービスに統合して、一括で提供するサービス