デフリンピック観戦レポート~それぞれの応援のカタチ~
「東京2025デフリンピック(きこえない・きこえにくい人の国際スポーツ大会)」開会式の翌日となる11月16日(日)、朝から駒沢オリンピック公園へと足を運びました。日本で初めて開催されるデフリンピック、どんな雰囲気なのか、ぜひ実際に見に行ってその空気を感じてみたかったのです。
まず向かったのは、バレーボールの予選が行われている駒沢体育館。
会場内は立ち見が出るほどの超満員です。聞いたところ、この日はほかの各会場でも長蛇の列ができ、入場制限がかかっていたところもあるようです。日曜日のお出かけ日和、予約不要・入場無料とはいえ、予想以上の盛況ぶりに驚きつつも嬉しい気持ちです。
大会各会場の混雑状況はこちらから確認できます
この日はなんと、日本vsイタリアの試合が男子・女子ほぼ同時開催、体育館のこちら側とあちら側で激しい戦いが繰り広げられるとあって、どちらも目が離せません!
陽気なイタリア、厳かな日本、国歌に感動
試合前には、両チームの国歌が流れます。まずはイタリアの「マメーリの賛歌」、これはとても勇ましい感じの曲で、選手たちはまるで踊っているようなリズムで元気よく手話言語で歌っていました。それに対して「君が代」は、とてもゆっくりとしたメロディ。観客席では声を出して歌っている人もいれば手話言語で歌っている人もいて、とても厳かな気持ちになりました。個人的には特に手話言語で表現される「さざれいしの いわおとなりて」の部分がよかったです。お国柄がとても出る国歌斉唱でした。
バレーボールの試合は、デフスポーツ特有のルールや違いはありません。もともと審判の合図はジェスチャーで、アウト・インなどを判断するラインジャッジも旗で知らせるので、誰もが目でわかるのはデフスポーツ向きかもしれません。笛での合図もあるので、きこえる人にもわかりやすいです。そんな中、選手たちはボールの音や選手同士の声がきこえない中でプレーしていると思うと、本当に素晴らしく、その身体能力に驚くばかりです。
少しずつ広がっていった「サインエール」の輪
バレーボール男子の観戦席には「サインエール応援団」が100名ほど会場に駆けつけています。サインエールというのは、今回のデフリンピックを機に作られた、手話言語をベースにした応援のスタイルのこと。リーダーたちの「行け!」「大丈夫 勝つ!」「日本、メダルをつかみ取れ!」の3パターンのサインエールをベースに応援します。
会場ではそのサインに合わせて太鼓をたたく人がいて、リズムの違いでどのサインエールを出すかがわかるので、きこえる人たちにもわかりやすく、これはとてもいいなと思いました。
デフアスリートに届ける新しい応援スタイル『サインエール』
少し離れたところから見ると、サインエールのエリアだけ、ビシッと動きが揃っていて、とても目立ちます。
そして気づいたら、応援団の左右でも、コートの向かい側でもサインエールの動きに合わせて応援している人が増えているではないですか!
きっと選手にもエールが届いているに違いありません。
バレーボール女子エリアでは、パラスポーツのファンを増やす応援プロジェクト「TEAM BEYOND」が観戦会を開催しました。参加者はそろって白いスティックバルーンを持っています。会場内にはほかにもそれぞれの応援団がいて、紫や金色のスティックバルーンのほか、推し選手の巨大な横断幕やうちわを持参するなど、ほかの試合と変わらない風景です。
観戦席は静かかと思うとそうでもなく、アタックが決まるたびに歓声が出て、ミスをするとため息が出ます。ただ、拍手は顔の横で手をひらひらとさせる手話言語で表すのと、選手に大声で声援を送る人はいません。その分、ボールの音や選手たちの息遣いを間近に感じます。会場にはきこえる人もいて、きこえない・きこえにくい人もいて、手話言語で話している人が自然と目に入ってきて、それが自然なことのように思えました。
違いはないけどちょっと違う、その違いはとても楽しく心地よく、なによりもこの素晴らしい国際試合の場をみんなで分かち合えたのが、とてもよい体験でした。
初日、バレーボール男子は惜しくも敗れてしまいましたが、女子は見事勝利をつかみました。まだまだ試合は続きます。
ハンドボールはユニバーサル実況
同じ駒沢オリンピック公園内にある、屋内球技場へも足を運びました。この日はハンドボールの男子予選が始まっていました。
日本のハンドボールはデフリンピック初出場。初戦は2017年のサムスン(トルコ)大会で優勝しているトルコと対戦しました。
こちらは会場内で1試合だけ行われていることもあり、スポーツMCが試合を盛り上げています。日本に点数が入るたびにMCが「GO GO JAPAN! GO GO JAPAN!」とコールしていて、それに合わせて観戦席の人々が、サインエールの「大丈夫、勝つ!」のサインをしていたのが印象的でした。
そして、会場の壁にはMCの言葉をリアルタイムでテキストに起こすボードが取り付けられていて、日本語と英語で表示されています。
試合には惜しくも21対30で負けてしまったけれど、強豪のトルコ相手に引けを取らない試合展開でした。会場からは両チームにいつまでも惜しみない拍手が送られました。
競技会場を出て、駒沢オリンピック公園の中を歩いていると、外国の選手団に遭遇しました。手を振れば選手たちもにこやかに手を振り返してくれます。顔の横で手をひらひらとさせる拍手は世界共通、国際手話の「こんにちは」も「ありがとう(←投げキッス!)」も覚えたので、使うチャンスをうかがいながら、またどこかの競技を応援しに行きたいと思います。







