【多摩動物公園】デコポンの1年間(後編)
昨日公開の前編に引き続き、インドサイ「デコポン」(メス)の1年間をご紹介いたします。それではさっそく本編をどうぞ!
2024年10月8日、私たちは小放飼場、パドック、産室の3つのエリアを繋げ、デコポンと母「ゴポン」が自由にすごせるようにしました。
小放飼場はデコポンにとって初めての場所だったため、ゴポンに寄り添ってすごしていましたが、見慣れたパドックや産室では駆け回るなどふだん通りのようすが見られました。一方、ゴポンはオスの「ビクラム」の姿が見えると警戒して、デコポンとともに産室に戻る場面もありましたが、数日で慣れたようです。
また、デコポンの安全を考慮し、プールの水深を10cmに調整しましたが、ゴポンはふだん通り浸かれないことに不満を示し、鼻を鳴らしてプールから上がり、泥浴びをする姿が見られました。

はじめての小放飼場
その後、小放飼場のみでの放飼を目標とし、小放飼場のみですごす時間と、3つのエリアを出入り自由にする時間を設けながら、放飼練習をおこないました。そして、放飼のリズムが安定し始めた10月24日から小放飼場での一般公開を開始しました。
しかし、11月ごろから、ゴポンが小放飼場に出ることを嫌がるようになりました。寒さ、そして出産前よりもはるかに多くなった人目を避けられない状況が影響したと考えられます。ゴポンが好むえさを小放飼場だけで給餌するようにしたり、こまめに給餌したり、えさのやり方をくふうしましたが、ゴポンの行動は変わらず、小放飼場への移動を拒否し続けました。
最終的に、小放飼場、パドック、産室の3つのエリアを再び出入り自由にする方式に戻しました。この変更後、ゴポンは小放飼場に出て採食するようになり、デコポンもゴポンといっしょに駆け回ったり、丸太を倒して遊んだりと元気な姿を見せていました。
同じく11月ごろには、デコポンの糞がおとなのサイに近い形状になり、乾草や青草、根菜を採食しているようすが確認されました。体つきもしっかりとしてきており、ゴポンのミニチュアのような印象を受けるほどでした。
ふだんから与えている乾草に加え、竹やススキ、コナラなど季節ごとに手に入る園内の植物を与えましたが、デコポンはどれも好き嫌いなくよく食べ、順調な成長を確認できました。
また、成長するにつれて、体つきだけでなく行動面でも変化が見られるようになりました。室内では鉱塩(塩を主体としミネラル分を添加した固形塩)を突き回して遊んだり、放飼場ではぬたばでの泥浴びがどんどんダイナミックになったりしていきました。

ゴポンに甘えるデコポン
ゴポンは小放飼場に出たがらず、非公開エリアのパドックで休息しています。
2025年2月にはプールの水位をデコポンが全身浸かることの出来る水深にしても入水し、ゴポンとともに水浴びをしていました。ですが、真夏におこなうシャワーでの水浴びはあまり好まないのか、ゴポンがシャワーを浴びているときに近くで見守っている場面も見られました。
4月ごろになると、デコポンはゴポンのトレーニング時に、ゴポンのご褒美である根菜類を食べようとトレーニングの指示者とゴポンのあいだに入り込こみ、トレーニングを妨げることが増えました。そのため、デコポン用の根菜を用意し、ゴポンの指示者とは別の係員が別の場所でデコポンを引きつける体制に変更しました。それでもデコポンの食欲は旺盛で、引きつけがうまくいかない場合にはゴポンのところに行って、根菜を横取りしようとする姿も見られました。

トレーニングのようす
手前の係員がゴポンに指示を出し、右奥の係員がデコポンに指示を出しています。
8月20日、デコポンの初めての体重測定を実施しました。ロードメーター(トラックの積載量を測る秤)にベニヤ板を敷き、その上をデコポンを歩かせて測定しました。リンゴやイモを与えながら板の上で静止させる方法で、約560kgという結果が得られました。この数値は11か月齢のメスのインドサイとして平均的な体重であり、デコポンが順調に成長していることが確認されました。

体重計の上に板を重ねて

ベニヤ板の上を歩いてもらいます
やっと1歳になったデコポン。まだしばらく母ゴポンのそばで生活し、哺乳もあと半年から1年ほど続きます。当園では、今後もデコポンの健康管理に努めながら、その成長を見守っていきます。元気いっぱいに成長するデコポンの姿を、ぜひ当園でご覧ください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 嵐田〕
◎関連記事
・インドサイの繁殖をめざして──「ゴポン」来園後の同居の状況について(2021年11月12日)
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(2025年09月23日)
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小放飼場はデコポンにとって初めての場所だったため、ゴポンに寄り添ってすごしていましたが、見慣れたパドックや産室では駆け回るなどふだん通りのようすが見られました。一方、ゴポンはオスの「ビクラム」の姿が見えると警戒して、デコポンとともに産室に戻る場面もありましたが、数日で慣れたようです。
また、デコポンの安全を考慮し、プールの水深を10cmに調整しましたが、ゴポンはふだん通り浸かれないことに不満を示し、鼻を鳴らしてプールから上がり、泥浴びをする姿が見られました。

はじめての小放飼場
その後、小放飼場のみでの放飼を目標とし、小放飼場のみですごす時間と、3つのエリアを出入り自由にする時間を設けながら、放飼練習をおこないました。そして、放飼のリズムが安定し始めた10月24日から小放飼場での一般公開を開始しました。
しかし、11月ごろから、ゴポンが小放飼場に出ることを嫌がるようになりました。寒さ、そして出産前よりもはるかに多くなった人目を避けられない状況が影響したと考えられます。ゴポンが好むえさを小放飼場だけで給餌するようにしたり、こまめに給餌したり、えさのやり方をくふうしましたが、ゴポンの行動は変わらず、小放飼場への移動を拒否し続けました。
最終的に、小放飼場、パドック、産室の3つのエリアを再び出入り自由にする方式に戻しました。この変更後、ゴポンは小放飼場に出て採食するようになり、デコポンもゴポンといっしょに駆け回ったり、丸太を倒して遊んだりと元気な姿を見せていました。
同じく11月ごろには、デコポンの糞がおとなのサイに近い形状になり、乾草や青草、根菜を採食しているようすが確認されました。体つきもしっかりとしてきており、ゴポンのミニチュアのような印象を受けるほどでした。
ふだんから与えている乾草に加え、竹やススキ、コナラなど季節ごとに手に入る園内の植物を与えましたが、デコポンはどれも好き嫌いなくよく食べ、順調な成長を確認できました。
また、成長するにつれて、体つきだけでなく行動面でも変化が見られるようになりました。室内では鉱塩(塩を主体としミネラル分を添加した固形塩)を突き回して遊んだり、放飼場ではぬたばでの泥浴びがどんどんダイナミックになったりしていきました。

ゴポンに甘えるデコポン
ゴポンは小放飼場に出たがらず、非公開エリアのパドックで休息しています。
2025年2月にはプールの水位をデコポンが全身浸かることの出来る水深にしても入水し、ゴポンとともに水浴びをしていました。ですが、真夏におこなうシャワーでの水浴びはあまり好まないのか、ゴポンがシャワーを浴びているときに近くで見守っている場面も見られました。
4月ごろになると、デコポンはゴポンのトレーニング時に、ゴポンのご褒美である根菜類を食べようとトレーニングの指示者とゴポンのあいだに入り込こみ、トレーニングを妨げることが増えました。そのため、デコポン用の根菜を用意し、ゴポンの指示者とは別の係員が別の場所でデコポンを引きつける体制に変更しました。それでもデコポンの食欲は旺盛で、引きつけがうまくいかない場合にはゴポンのところに行って、根菜を横取りしようとする姿も見られました。

トレーニングのようす
手前の係員がゴポンに指示を出し、右奥の係員がデコポンに指示を出しています。
8月20日、デコポンの初めての体重測定を実施しました。ロードメーター(トラックの積載量を測る秤)にベニヤ板を敷き、その上をデコポンを歩かせて測定しました。リンゴやイモを与えながら板の上で静止させる方法で、約560kgという結果が得られました。この数値は11か月齢のメスのインドサイとして平均的な体重であり、デコポンが順調に成長していることが確認されました。

体重計の上に板を重ねて

ベニヤ板の上を歩いてもらいます
やっと1歳になったデコポン。まだしばらく母ゴポンのそばで生活し、哺乳もあと半年から1年ほど続きます。当園では、今後もデコポンの健康管理に努めながら、その成長を見守っていきます。元気いっぱいに成長するデコポンの姿を、ぜひ当園でご覧ください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 嵐田〕
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