スマートシティを目指す南大沢で始まった未来の配送
南大沢に登場した自動配送ロボット「LOMBY」
労働力不足と買い物難民に対応
「高齢化社会が進行する中で発生するのは、労働力不足と買い物に行きづらい、いわゆる買い物難民が増えるという問題です。LOMBYはこうした社会課題の解決に役立つロボットです」
丘陵地にある南大沢地区は坂道が多く、移動の負担が大きい。街の開発から40年以上が経過し、高齢化が進んだ地域でもある。
LOMBYは、地区内にあるセブン-イレブンの2店舗から個人宅までの配送を担う。アプリを通じて店舗にある約3,000アイテムから注文が可能だ。ロボット配送の受付時間は9時30分から20時までで、配送料は330円。もちろん雨の日も配送する。
「物流のスマートインフラとして貢献したい」と話す内山氏
地域の見張り役としての期待も
地域住民の反響は上々だ。
「高齢者だけではなく、子どもたちからも喜ばれています。アプリで LOMBYがどこを走っているかを確認できるのですが、家に到着する前から外に出て待ち構えている人もいるようです。また地域の防犯に役立つという意見もいただいています。『ロボットが走行しています』と音声を出しながら走行するので注意喚起を促すようです」
耳に心地よいアニメ声も好評だ
遠隔操作型小型車の安全基準適合審査も通過しており、安全性能にも問題がない。時速約6kmで走行し、信号や横断歩道を自動で認識。坂道や段差にもスムーズに対応し、人が近づくと安全を確保するため停車するようになっている。
スマート化がまちの未来を拓く
LOMBYが南大沢地区で事業を進めるきっかけとなったのが、南大沢スマートシティ協議会だ。
「地元自治会や住民の方たちとの会合を設けていただくなど、これまでたくさんのサポートを受けています」
アプリに提示されたQRコードをかざすと扉が開く Movie: LOMBY株式会社
南大沢スマートシティ協議会は、この地区において先端技術の研究とICT活用を図りながら、持続可能なスマートシティの確立を目指し、東京都が2020年に設立した協議会で、東京都立大学、八王子市や地元企業、通信事業者等とともに地域の社会課題解決に向けた取組を進めている。
東京都都市整備局多摩まちづくり政策部事業推進担当課長の小田切大輔氏は、「2025年3月に新たに『多摩のまちづくり戦略』を策定しました。多摩ニュータウン全体にもLOMBYのようなスマートサービスを充実させ、さらなるまちのにぎわいづくりを進めていきたいです」と話す。内山氏も「スマートサービスが充実することで、このエリアを再構築できると思います」と同意する。
夜間はライトを点灯させて走行する Photo: courtesy of LOMBY株式会社
内山氏は、さらに今後の展開について次のように語った。
「配送において最後の受け取り手に届くまでのラストワンマイルにおける課題は、世界でも認識されています。昨年、視察で訪れたドイツでも喫緊の課題として捉えている人が多かったです。南大沢でしっかり実績を積んで、今後はグローバルな展開を進めていきたいですね」
内山智晴
LOMBY株式会社 代表取締役。2017年に物流の再配達をなくす、置き配バッグOKIPPAを展開するYper株式会社を設立。2022年に自動配送ロボットを開発するLOMBY株式会社を設立。
LOMBY株式会社
取材・文/今泉愛子
写真/穐吉洋子