【多摩動物公園】シロチョウ類の展示復活に向けて

東京ズーネット

 多摩動物公園の昆虫生態園では、身近な種類のチョウとしてモンシロチョウやスジグロシロチョウなどの「シロチョウ」と名がつくなかまを飼育展示しています。キャベツ畑や小松菜畑に卵を産みに来るおなじみのチョウです。
 


幼虫の餌にする小松菜を育てています

 5月ごろまでは園内でもよく目にするのですが、これらの種は暑さに弱いため梅雨入りの時期からあまり見られなくなり、暑さが一段落した秋に再びよく姿を見せるようになります。

 暑さに弱いのであれば、冷房の効いた涼しい部屋で幼虫を育てて成虫を羽化させればよいのでは?と考え、昨年挑戦しましたが、うまく育たずにほとんどの幼虫が死亡して8月には飼育が途絶えてしまいました。仮に飼育がうまくいっていたとしても、暑さに弱いこれらの種を猛暑の生態園に放すのは酷なので、結果論ながら、夏に飼育展示をお休みするのは理にかなった管理方法と言えるかもしれません。

 そこで、秋に野生の成虫を捕まえて採卵し、飼育展示を復活させようと思っていたのですが、待てど暮らせど一向に成虫が現れません。そうこうしているうちに冬になり、野生での羽化が始まる春まで待つこととなりました。

 年が明けて春になり、もうそろそろ成虫が出てきてもいい頃かなと思っていた今年の4月下旬、1匹のスジグロシロチョウのメスを捕まえることができました。このメスは翅がだいぶ傷んでいたため、もうすでに卵を産み終わった個体の可能性もあったのですが、採卵用のケージに入れておいたところ、思いのほかたくさん、約30個もの卵を産んでくれました。
 
採卵のようす
小松菜に産み付けられた卵


 孵化した幼虫は順調に成長し、5月上旬から中旬にかけてすべての個体が蛹になりました。羽化が始まったのは5月16日。晴れて成虫になったスジグロシロチョウを生態園に放し、実に9か月ぶりに「シロチョウ」類の展示が復活しました。

 これからどんどん暑くなるので、あと2か月もすると飼育をお休みする予定です。今年は秋に野生の成虫が見つからなかった時に備え、今のうちから越冬蛹を準備しておく予定です。越冬蛹については、過去のスジグロチョウの記事カラスアゲハの記事で紹介しています。

 気候の良いこの時期に生態園を舞う「シロチョウ」類をぜひご覧ください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 中澤〕

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