【上野動物園】野生のライチョウ保全のための精液採取を本年度も実施。野生オス1羽が死亡

東京ズーネット
 環境省と公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)は、2014年に締結した「生物多様性保全の推進に関する基本協定」にもとづき、ライチョウ保護増殖事業の一環として、昨年度に引き続き、乗鞍岳の野生のライチョウから精子を採取し、飼育の雌個体に人工授精する事業を実施しました。
 
精液を採取した野生のライチョウ
精液採取作業

 今回、生息地である乗鞍岳において2025年5月21日と22日、野生のオス4羽から精液を採取しました。精液は富山市ファミリーパーク、上野動物園、横浜市繁殖センターに運び、人工授精をおこないました(富山市ファミリーパークは5月21日にメス2羽へ、上野動物園では5月22日にメス1羽へ、横浜市繁殖センターでは5月23日にメス1羽に対して実施)。

 なお、生息地で野生個体から精液採取の作業中、オス1羽が死亡しました。
 

ライチョウとは

 ライチョウは世界で23亜種が知られていますが、その中で日本産ライチョウはもっとも南に分布する亜種です。かつて大陸から日本列島に移りすみ、その後、温暖になるとともに本州中部の高山帯に“取り残された”と考えられています。現在、絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物にも指定されている希少な鳥です。
 

保全への取り組み

 上野動物園は公益社団法人日本動物園水族館協会の加盟園館として、環境省が2021年3月に策定した「第2期ライチョウ生息域外保全実施計画」にもとづき、飼育下個体群における遺伝的多様性の維持のために、2021年度から人工採精や人工授精の技術開発に取り組んできました。
 

保全への取り組み

 昨年2024年は、野生個体から5月25日と26日に採取された精液を富山市ファミリーパークに運び、メス5羽に対して人工授精をおこなったところ、得られた12卵のうち2卵が6月28日に孵化しました(詳しくはこちらをご覧ください)。
 

野生オス1羽の死亡について

 5月22日に乗鞍岳で精液採取の作業中、オス1羽が死亡しました。現在、環境省によって原因調査が進められ、精液採取手法の検証も含め、再発防止のために専門家との検証が進められています。

(2025年05月28日)
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