【葛西臨海水族園】キタフナムシ用の岩を”作る”

東京ズーネット
 このタイトルを見て、どういうこと?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 水族園の水槽は、生き物だけでなく、岩などのレイアウトも、自然の海を再現しています。以前の記事で、水槽内の岩の中には、「擬岩」(ぎがん)と呼ばれる繊維強化プラスチック(FRP)などで作られた、作り物の岩を使っていると紹介しました。このような擬岩は、専門の職人に作ってもらうことがほとんどですが、小さな水槽の場合は自分たちで作ることもあります。そこで今回は、擬岩を実際に作って展示したようすを紹介します。

 作成したのは、特設展示「イキモノマヂカ」内の「ゾゾゾノマヂカ」のキタフナムシを展示しているガラス水槽の擬岩です。もともと使っていた擬岩の劣化に伴い、数年ぶりにこの擬岩を作り直すことになりました。この水槽は、毎日の掃除で擬岩を取り出すため、出し入れの際にガラスに傷がつかないように、柔らかく加工しやすい、食品トレーなどに使われる発泡スチロールを使用しました。

まずは、発泡スチロールのブロックを大まかな形に切り出します。
 

発泡スチロールに下書きをして、切り出していく

 フナムシのなかまは磯や港の岸壁などでくらす生き物で、自然の海では岩のへこみなどに集まってくらしています。そのため、内側を削ってさまざまな凹凸を作り、自然の岩の形を再現します。(ちなみにこのへこみは、多くのフナムシが集まって、エリア名のように思わず「ぞぞぞ」と感じていただきたいと思い作りました!)
 

キタフナムシが集まっているようす

 その後、実際の岩に似せて着色します。
 

へこみなどの凹凸を作り、色を塗ることで岩そっくりに!

 こうしてでき上がった擬岩は、水質悪化を防ぐため水につけてアク抜きをしたあと、展示デビューします。
 ここまで簡単に紹介しましたが、実際に作るときには、ガラスとの間に隙間があるとキタフナムシが入り込んだり、隙間がないと擬岩が取り出せなくなったりと、さまざまな微調整をしながらの作成で、完成まで1か月以上かかりました。スタッフ力作のこの擬岩は、現在、ゾゾゾノマヂカで展示をしていますので、ぜひご覧ください。
 

新しく作成した擬岩にキタフナムシがくっついているようす

 水族園では、生き物だけでなく、環境も再現するためにさまざまな工夫をしています。水槽を見るときには生き物だけでなく、水槽のレイアウトなども意識して見てみると、また違う発見があるかもしれません。

〔葛西臨海水族園教育普及係 津山透〕

◎関連ニュース
「紅海」水槽をリニューアル──擬岩の話(2010年04月23日)
生き物をもっと間近に!──イキモノマヂカ その2(2023年04月28日)

(2025年05月23日)
関連ワード
カテゴリ
タグ