【葛西臨海水族園】水槽のなかで繁殖したオオヘビガイ、殻から出す粘膜の正体は?

東京ズーネット
 葛西臨海水族園の「しおだまり」コーナーでは、関東近辺の磯でよく見られる生物を展示しています。

 2025年1月の終わりごろから、直径1~2cmほどの小さなオオヘビガイが水槽内の岩の表面に見られるようになりました。日々の観察を続けていると、ほかにいくつもいることに気がつきました。

 オオヘビガイと聞いて、パッと頭に姿が浮かぶ方は少ないかもしれませんが、サザエやアワビと同じ巻貝のなかまです。巻貝にもさまざまな形をしている種がいますが、オオヘビガイは名前にあるように、ヘビがとぐろを巻いたような形をしています。

 おもに北海道南部から九州にかけて分布し、潮の満ち引きによって取り残された「タイドプール」(海の水たまり部分)で見ることができ、殻全体の大きさは5cmほどになります。

 


水槽内で増えた小さなオオヘビガイ

 また、殻を背負って動き回るサザエに対して、オオヘビガイは一生のほとんどを岩に付着してくらします。このため、同じ巻貝のなかまでも、えさの食べ方にも違いがあります。

 サザエはワカメやアラメといった海藻類を歯の部分で削り取って食べています。歯といっても、私たちの歯とは異なり、「歯舌」(しぜつ)とよばれる細かいリボン状の器官をもちます。巻貝の歯について紹介している記事もぜひご覧ください。

 一方の、オオヘビガイは歯舌をもちません。殻の入口から粘膜を広げ出して、えさとなるプランクトンや死んだ生物のかけらなどを粘膜に絡ませて食べています。

 


粘膜を出してえさを絡ませているようす

 タイミングがあえば、水槽内で粘膜を伸ばしてえさを食べている姿を観察することができます。水族園ではえさとして、ブラインシュリンプと呼ばれる甲殻類の幼生を与えています。

 おもしろいことに、この粘膜は繁殖するときにも利用するようです。オスが海水中に精子を入れたカプセルを放出し、メスが粘膜を使ってそれらを捕まえ、体内に回収し受精させる、という方法です。

 また、水槽内を観察しているとオオヘビガイの殻からナベカなどの魚が顔を出している姿も、ときおり見かけます。このように、死んで中身がなくなった殻はほかの生きもののすみかとして役立つこともあります。

 


オオヘビガイの殻に入っているナベカ

 一見すると動きの少ないオオヘビガイですが、生態を知ってよく観察してみるとおもしろい発見があるはずです。ぜひ、水槽のなかで繁殖したオオヘビガイを見に来てくださいね。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 髙橋奏芽〕
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