【上野動物園】国際ホッキョクグマの日──次の繁殖期に向けた取り組み 2025年2月27日 東京ズーネット 2月27日は「国際ホッキョクグマの日」です。この日は野生のホッキョクグマの現状を多くの人に知ってもらうことを目的として制定されました。昨年はこの日に合わせ、「イコロ」(オス)と「デア」(メス)での人工授精の取り組みについてお伝えしました。残念ながら妊娠にはつながりませんでしたが、今回はその人工授精以降の取り組みについてお伝えします。 昨年1月の人工授精後、デアの行動観察と採血を継続して実施しました。 飼育下のホッキョクグマは、個体差はあるものの妊娠に伴ってエサの好みに変化が生じたり、オスへの警戒が強まったりと、行動の変化が現れることが多いといわれています。デアは出産経験がないため、妊娠していた場合にどのような変化が現れるのかわかりません。 繁殖の経験のある複数園館からの助言も踏まえながら、毎日の採食状況や行動変化を記録し、9月下旬からは展示を中止したうえで24時間の録画観察を続けましたが、特段の変化は確認できませんでした。妊娠に伴う血中ホルモン値の変化を見るために、週に一度ほどの採血も継続しましたが、その数値の変化からも、妊娠の可能性は低いとの結論に至りました。 12月下旬より展示を再開し、現在は今シーズンの繁殖期に向けた準備を進めています。 ※当のデアは産室での生活を気に入っているようなようすで、期間中は落ち着いて過ごしていました。 残念ながら昨年は妊娠・出産には至らなかったものの、産室でのデアの過ごし方や、嗜好性の変化の有無などを長期間にわたって観察することができました。 今シーズン、デアに発情の兆候は未だ見られていません。2頭の行動変化を注意深く観察するとともに、デアへの継続的な採血検査によるホルモン値の変化も参考に、2頭の同居や人工授精に適した時期を見極めていきます。またその後は、前回のデアの行動データとの比較も元にしながら、妊娠の有無を判断していきます。 昨年は国内でも複数の園館でホッキョクグマが誕生しています。たくさんの方々にホッキョクグマを見ていただく機会をさらに増やし、野生のホッキョクグマに関心を持っていただけるよう、上野動物園で初めての繁殖に向けて、一層力を入れていきます。 採血のために右前足を出すデア イコロも、採血を目指したトレーニングを始めています 〔上野動物園東園飼育展示係〕