【多摩動物公園】冬の風物詩「トナカイ」

東京ズーネット

 多摩動物公園では現在1頭のトナカイを飼育しています。トナカイと聞いてみなさんが想像するものはいったい何でしょうか。私はクリスマスの赤鼻のトナカイを思い浮かべます。

 簡単に説明しますと、生まれつき鼻が赤い「ルドルフ」というトナカイがみなに馬鹿にされていましたが、ある年のクリスマスにサンタのそりを引く役にスカウトされます。そこで活躍して誰からも認められるというお話です。

 トナカイの鼻は本当に赤いのか。オランダの研究チームが調べたところ、驚くべきことがわかりました。トナカイの鼻の毛細血管はヒトより数が多く、血管の密集度も25%ほど高いことが判明したのです。熱探知カメラを使い赤外線で見ると、実際に赤いこともわかりました。真っ白な冬毛のときは、肉眼でも鼻先がピンクに見えるときもあります。そんなことから赤鼻のトナカイという説話ができたのでしょうか。

 トナカイについては、そりを引くイメージをもつ方もいらっしゃると思います。クリスマスシーズンによく見る角のあるトナカイたちは理論上メスであると断言できます。シカ科では珍しく雌雄両方に角があり、毎年生え換わるトナカイですが、オスとメスで角が落ちる時期が違います。オスは秋の繁殖期が終わったあとに落ち、メスは翌年の春先に落ちます。

 これは深い雪が積もる生息地でえさを探す際、雪をかき分けるため、また角は抜け落ちたとはいえ大柄な体のオスと張り合って生き延びるためといわれています。このことからよくクリスマスの広告などで見る角があるトナカイはメスだということがわかります。当園で飼育しているメスの「レラ」という個体も、現在立派な角が生えています。

 また、トナカイなどのシカ科の動物たちはほかの動物にはあまり見られない現象があります。それは「破角」(はかく)です。トナカイの角は、表面が皮膚で覆われた袋角(ふくろづの)という状態で成長していき、角が伸びきり成長が止まると皮膚がはがれて白い角が現れていきます。これを破角といいます。破角時には角から出血することも多々あり、来園者の方々から心配の声をいただくことが多いのですが、これはいたって正常なことで、白い角になる準備なのだとご理解いただけるとうれしいです。当園のレラも破角中であり、よく見ると角の先に剝がれた皮膚が見えるかもしれません。
 

破角前の角(袋角)
破角中の角


 クリスマスも終わり、巷ではトナカイについて話題になることもありませんが、今年度は毎月2回トナカイのキーパーズトークをおこなっています。もっとくわしくトナカイのことが知りたい、質問したいことありましたらぜひこの機会に多摩動物公園にご来園ください。お待ちしております。

〔多摩動物公園飼育展示課南園飼育展示2係 岡田〕

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