【井の頭自然文化園】カヤネズミのくらしの秘密と展示のくふう
カヤネズミは日本にすむネズミの中でも最小のネズミで、体長5~7cmほど、体重は6~10gほどで、500円玉くらいの重さしかありません。カヤネズミが生活している環境は名前の一部にもなっている、茅(かや)が密生している草地です。
茅とは、ススキやチグサなどイネ科植物の総称で、河川敷や休耕田でよく見ることができます。人が中に入るのが難しいほど茅が密生している茅原(かやはら)でも、カヤネズミは体よりも長いしっぽを草に巻きつけたり、体重の軽さを活かし、ほかのネズミでは登れない細い草の上も自由に移動したりしてくらしています。

草の上を移動するカヤネズミ
井の頭自然文化園の展示では、実際の生息環境を再現するため、夏に園内で繁茂していたススキの葉や茎を刈り取って入れています。自生しているススキであれば、いつまでも葉がしっかりしているのですが、刈り取ったものだとすぐに“くたびれて”しまいます。そのため、中心部は硬い茎の部分を集め、その周りに葉の部分を巻き付けて形が崩れないようにくふうしています。

茅原をイメージした展示
また、カヤネズミは巣も草を使って作ります。「球巣」(きゅうそう)と呼ばれる手のひらサイズの丸い形の巣で地面から1m前後の場所に作ります。外側は草を荒く編み、中心に近いところは草を細かく裂いて柔らかくしたものを入れた二重構造になっています。
井の頭自然文化園では、球巣を作るのが上手くない個体のため、そして球巣を回収して掃除をしたあともすぐ休めるように、球巣を手作りして与えています。構造は簡単で、テニスボールを一部くり抜き、その周りに草を巻き付けたものです。人工物ですが、カヤネズミは警戒することはなく、実際にそこで繁殖し、生まれた子が巣から鼻先をのぞかせていたこともありました。
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当園では、カヤネズミ以外にも、地面に穴を掘ってくらすハタネズミや、樹上に登れるヒメネズミなども飼育しています。それぞれ異なるくらし方にも注目して観察してみてください。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 野村〕