【井の頭自然文化園】どこかに、サワガニ。

東京ズーネット
サワガニは一生を淡水でくらすカニです。渓流や沢など、冷たい水が流れる場所で見られ、岩や落ち葉の下にいることが多いです。平らな体は、わずかな隙間に入り込み身を隠すのに便利な形。この体の特徴はサワガニに限らず多くのカニに共通する特徴でもあります。

 サワガニのように「隠れる」習性のある生き物を展示するときには工夫が必要です。隠れる場所が何もない水槽にすれば観察しやすいですが、生き物は落ち着かないですし、何よりどんなところで、どんなふうにくらしているのか想像しにくくなります。一方、生き物が完全に隠れてしまっても観察できません。

 そこで、現在の展示では見やすい場所に木を沈めて、その下にカニを誘う作戦にしました。他の場所は砂や石で隙間を埋めて、よし完璧!とサワガニを入れてみると……想像以上に砂を掘り、あちこちに新たな隠れ場所を作ってしまうことが分かりました。そういえば野生のサワガニも、沢などでは石をひっくり返して見つけますが、湧き水が近くにある山の中などでは土に穴を掘ってくらしていました。

 そこからは、とにかくサワガニの掘りやすそうな場所にどんどん大きめの石を置いていくというイタチごっこならぬサワガニごっこ。最近では、どうにか木の下がお気に入りの場所になってきました。

 ところで、水生物館ではときどき「サワガニが館内を歩いています、逃げたのですか?」と声をかけていただくことがありますが、それは井の頭公園内からやってきた野生のサワガニです。井の頭池に流れこむ地下水は夏でも18℃ほどと冷たく、公園のどこかにはサワガニがくらせる場所があるようです。意外と身近なところにもいるサワガニ。みなさんもぜひ観察してみてくださいね。
 

隠れている生き物を見つけるコツは「いる」と信じて探すこと。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 堀田〕
関連ワード
カテゴリ
タグ