【多摩・野生生物保全センター】「野外で保護されたクロツラヘラサギの来園
2024年6月11日、1羽のクロツラヘラサギ(性別不明、推定2023年生まれ)が多摩動物公園に来園しました。このクロツラヘラサギは今年の2月に福岡県で保護されましたが、足の骨折が治癒せず片足の一部を断脚し義足をつけたため、野外に放鳥できないことから多摩動物公園に来園しました。今回はこの個体が来園するまでの経緯を報告します。

義足を装着した保護個体
クロツラヘラサギは絶滅が危惧されている種のひとつで、日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど、おもに東アジアに約6,000羽が生息しています。その一部は日本の九州や沖縄など西日本を中心に飛来して冬をすごすことが知られており、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称「種の保存法」)にもとづく国内希少野生動植物種にも指定されています。
海や河口に近い浅い水場で小魚や甲殻類、水生昆虫を捕まえて食べますが、その採食方法は独特で、浅い水の中にくちばしを入れて半円を描くように首を振り、視力よりもくちばしの先端にあるセンサーでえさを探り当てているようです。そのためくちばしや足に水辺に落ちているゴミや釣り糸が絡みつくなど、思わぬ事故に遭遇しそのまま衰弱して死亡することもあります。
今回来園した個体は、残念ながら骨折箇所が治らず、やむなく踵の関節(鳥の肢で人間のひざと逆の方向に曲がっているように見える部分)より下を断脚し、この個体専用の義足を装着することになりました。
しかし、義足となると定期的なメンテナンスが必要なため飼育下にいた方が安心です。そこで、環境省の協力を得て、クロツラヘラサギの飼育羽数の多い当園で受け入れることになりました。

多摩動物公園に到着して輸送箱から出るところ
多摩動物公園に到着後、動物病院内で環境に慣らしたあと、いよいよほかの鳥との対面をおこないました。育雛舎というひなを育てるための施設にちょうど人工育雛のクロツラヘラサギのひながおり、その隣のケージで保護個体を飼育して、ひなが見えるようにしました。初めは驚いて距離をとっていましたが、現在は少しずつ関心を示すようになってきて、網越しに近づいて、ようすを見ているようです。

保護個体(手前)と人工育雛個体(奥)
将来的には群れで飼育することを考えています。これからの第二の人生を多摩動物公園のなかまといっしょにすごし、飼育下の個体との繁殖なども視野に入れて、飼育していくことになります。
近年、クロツラヘラサギの日本への飛来数は増えてきており、野外での事故が増えているとも聞いています。これからも動物園からクロツラヘラサギに関するさまざまな情報を発信していきます。
〔野生生物保全センター保全係 石井〕
◎関連記事
・野生生物保全の推進に向けた新たな取組み(2023年05月19日)

義足を装着した保護個体
クロツラヘラサギは絶滅が危惧されている種のひとつで、日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど、おもに東アジアに約6,000羽が生息しています。その一部は日本の九州や沖縄など西日本を中心に飛来して冬をすごすことが知られており、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称「種の保存法」)にもとづく国内希少野生動植物種にも指定されています。
海や河口に近い浅い水場で小魚や甲殻類、水生昆虫を捕まえて食べますが、その採食方法は独特で、浅い水の中にくちばしを入れて半円を描くように首を振り、視力よりもくちばしの先端にあるセンサーでえさを探り当てているようです。そのためくちばしや足に水辺に落ちているゴミや釣り糸が絡みつくなど、思わぬ事故に遭遇しそのまま衰弱して死亡することもあります。
今回来園した個体は、残念ながら骨折箇所が治らず、やむなく踵の関節(鳥の肢で人間のひざと逆の方向に曲がっているように見える部分)より下を断脚し、この個体専用の義足を装着することになりました。
しかし、義足となると定期的なメンテナンスが必要なため飼育下にいた方が安心です。そこで、環境省の協力を得て、クロツラヘラサギの飼育羽数の多い当園で受け入れることになりました。

多摩動物公園に到着して輸送箱から出るところ
多摩動物公園に到着後、動物病院内で環境に慣らしたあと、いよいよほかの鳥との対面をおこないました。育雛舎というひなを育てるための施設にちょうど人工育雛のクロツラヘラサギのひながおり、その隣のケージで保護個体を飼育して、ひなが見えるようにしました。初めは驚いて距離をとっていましたが、現在は少しずつ関心を示すようになってきて、網越しに近づいて、ようすを見ているようです。

保護個体(手前)と人工育雛個体(奥)
将来的には群れで飼育することを考えています。これからの第二の人生を多摩動物公園のなかまといっしょにすごし、飼育下の個体との繁殖なども視野に入れて、飼育していくことになります。
近年、クロツラヘラサギの日本への飛来数は増えてきており、野外での事故が増えているとも聞いています。これからも動物園からクロツラヘラサギに関するさまざまな情報を発信していきます。
〔野生生物保全センター保全係 石井〕
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