都医学総合研究所等 興奮性シナプス障害を発見

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RP58/ZBTB18ハプロ不全の原因として興奮性シナプス障害を発見

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公益財団法人東京都医学総合研究所 旧神経細胞分化プロジェクト平井清華外部研究員、睡眠プロジェクト三輪秀樹協力研究員(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部 室長)、新保裕子研究技術員(神奈川県立こども医療センター臨床研究所 研究員)、岡戸晴生シニア研究員、フロンティア研究室脳代謝制御グループ平井志伸主任研究員らの研究グループにより、RP58/ZBTB18ハプロ不全【注1】による知的障害の病理機序が、興奮性シナプスの障害である可能性が示唆されました。今回、RP58/ZBTB18ハプロ不全のモデル動物として、RP58ヘテロ欠損マウスを作製、解析し、次の4点を明らかにしました(図1)。

【注1】RP58/ZBTB18ハプロ不全
ハプロ不全(haploinsufficiency)とは、正常な単一アリルのみからの遺伝子発現量では効果が不足し、正常な機能を維持することができないことによる疾患。RP58/ZBTB18の正常な遺伝子産物(タンパク質やRNA)の量的不足に起因し、遺伝形式は顕性遺伝(優性遺伝)となる。多くは遺伝ではなく、親の生殖細胞や受精後に新たに発生した個体レベルで生じる突然変異(de novo変異)による。

図1
  • (1)本モデルマウスの脳の組織解析では、大脳皮質の層形成には有意な異常は見られませんでしたが、脳梁の形成不全を示しました。これは、RP58/ZBTB18ハプロ不全患者でも報告されている異常です。
  • (2)本モデルマウスは運動学習、ワーキングメモリー、認知記憶の柔軟性が障害されていました。これらの表現型は知的障害の症状と類似しており、このマウスはRP58変異を原因とした知的障害のモデルマウスとして妥当であると考えられました。
  • (3)上記マウスの大脳皮質ではグルタミン酸受容体の発現減少が見出されました。また、海馬CA1ニューロンでのNMDA受容体の応答に異常があり、頻回刺激を繰り返した場合のシナプス長期増強の飽和レベルが低下していました。これらのことは、記憶や学習機能に重要な役割を果たすグルタミン酸受容体シナプス応答に異常が生じていることを示しています。
  • (4)さらに海馬CA1錐体細胞のスパインの形態解析により、スパインの形態異常が発見されました(図2)。
図2

これらの成果は、RP58/ZBTB18ハプロ不全の背景に興奮性シナプスの障害が存在することを示唆しており、RP58/ZBTB18ハプロ不全により生じる知的障害の予防、治療法の開発に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2023年2月1日(水曜日)午前10時00分(日本標準時)に米国科学誌『Molecular Psychiatry』にオンライン掲載されました。

  • 論文名
    " The mouse model of intellectual disability by ZBTB18/RP58 haploinsufficiency shows cognitive dysfunction with synaptic impairment "
  • 発表雑誌
    Molecular Psychiatry
    DOI:10.1038/s41380-023-01941-3
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※別紙 研究の内容等

問い合わせ先

(研究に関すること)
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電話:090-2444-1725

(東京都医学総合研究所に関すること)
東京都医学総合研究所事務局研究推進課

電話:03-5316-3109

(国立精神・神経医療研究センターに関すること)
国立精神・神経医療研究センター総務課広報室

電話:042-341-2711

メール:mail:ncnp-kouhou@ncnp.go.jp

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